BEER ・ 入門

ビール入門

麦芽・ホップ・水・酵母と、エール/ラガーから知る基本

BEER / 約14分で読めます / 2026

ビールって、実は原料も造り方もシンプルです。麦芽とホップと水と酵母、この4つがほとんど全部。そこが分かると、次の一杯の選び方が急に楽になります。

スーパーの棚には「ビール」「発泡酒」「新ジャンル」が並び、居酒屋のメニューには「ピルスナー」「ペールエール」「IPA」「スタウト」といった横文字が並びます。知らなければただの飾りに見えますが、どれもちゃんと意味があります。ビールと発泡酒を分けているのは何なのか。エールとラガーは何が違うのか。ここが分かると、缶の裏の小さな文字まで読めるようになります。

この記事では、ビールの基本を原料・製法・スタイルの順に整理します。日本の酒税法での「ビール」の位置づけ、発泡酒や新ジャンルとの違い、ラベルの読み方、そして最後に違いを飲み比べで知るための8本も選びました。専門用語はできるだけかみ砕くので、暗記はしなくて大丈夫です。

なお本記事は、酒税法・国税庁や財務省の公式情報・各社の公式情報など、確認できた事実を土台にしています。確証の取れない通説は「〜と言われる」と正直に書き分けました。温度や日数などの数字は、酵母やタイプで幅が出るので「目安」として読んでください。


01 ・ DEFINITION

ビールとは何か

ビールは、麦芽・ホップ・水を主な原料として発酵させた、発泡性の醸造酒です。蒸留したり混ぜたりして造るのではなく、あくまで「発酵させたもの」であることが要件です。日本の酒税法(第3条第12号)では、麦芽・ホップ・水を発酵させたもの、または麦芽・ホップ・水に麦その他の政令で定めた原料を加えて発酵させたもので、いずれもアルコール分が20度未満のものをビールと定めています。

ここで日本ならではの、少しややこしい話に入ります。日本の酒税法では、麦を使った発泡性のお酒が「ビール」「発泡酒」「その他の発泡性酒類(いわゆる新ジャンル)」の3つに分かれています。この3つを分けている決め手が、麦芽の使用割合使ってよい副原料の範囲・量です。

ビールと名乗るための条件

いまの酒税法で「ビール」を名乗るには、大きく2つの条件があります。

この「麦芽50%以上」は、実は最近まで違いました。2018年(平成30年)4月1日の酒税法改正で、それまでの「3分の2(約67%)以上」から「50%以上」へ引き下げられたのです。だから2018年より前は3分の2以上必要でした。この緩和で、それまで発泡酒だった一部の海外ビールが、日本でも「ビール」と表示して売れるようになりました。

発泡酒・新ジャンルとの違い

ビールの条件を外れると「発泡酒」になります。具体的には、麦芽の割合が50%未満のもの、または麦芽が50%以上あっても認められない副原料を使ったり、副原料が5%の上限を超えたものです。「発泡酒=安物」というイメージがありますが、法律上は「ビールの枠を外れた麦系の発泡酒」というだけで、味の優劣とは別の話です(これは後の8本で実物を挙げます)。

いわゆる「新ジャンル」「第三のビール」は、法律上の正式名称ではなく通称です。麦芽を使わず大豆やえんどう豆などを発酵させたものや、発泡酒に麦由来のスピリッツを加えたものを指し、酒税法上は「その他の発泡性酒類」などに分類されてきました。かつては税金が安く設計されていたため、各社が競って開発した区分です。

これら3つは、酒税法の大きな区分では「発泡性酒類」にまとめられます。酒税法は酒類を発泡性酒類・醸造酒類・蒸留酒類・混成酒類の4つに大別しており、ビールも発泡酒も新ジャンルも、この発泡性酒類の仲間です。チューハイやサワーも、同じ「その他の発泡性酒類」に入ります。

税金の「差」がなくなっていく

長らくビール・発泡酒・新ジャンルは酒税額に大きな差があり、それが商品開発をゆがめてきました。そこで国は2020年・2023年・2026年の3段階で、ビール系飲料の税率を一本化しています。350ml換算で見ると、ビールは2020年10月に70円、2023年10月に63.35円へと段階的に引き下げられ、発泡酒は2020年・2023年を通じておよそ47円(46.99円)で据え置かれてきました。新ジャンルは2023年10月の改正で酒税額が発泡酒と同額になり、税制上は発泡酒とほぼ同じ扱いになりました。ただし、これで「新ジャンル」という呼び名や商品そのものが消えたわけではありません。

そして2026年(令和8年)10月1日に、ビール系飲料の税率は350ml換算で54.25円(1klあたり15万5千円)へ完全に統一されます。これでビールは減税、発泡酒や新ジャンルは増税となり、3者の税差がなくなります。税差がなくなる分、価格差を理由に選ぶ動機は小さくなります。ここからは、味わいで選ぶ場面が増えていきそうです。なお酒税額は改正の段階ごとに変わるので、ここでは各時点を明記しました。


02 ・ INGREDIENTS

麦芽・ホップ・水・酵母、四つの素材

ビールを形づくるのは、基本的に4つの原料です。麦芽、ホップ、水、酵母。この組み合わせと、産地や製法の違いが、そのまま味の幅になります。米やコーンといった副原料を加えることもありますが、まずはこの4つを押さえれば十分です。

麦芽(モルト)は甘さと色の源

麦芽は、主に大麦を発芽させてから乾燥・焙燥させたものです。麦芽自身が持つ酵素の働きで、でんぷんが糖に分解されます(これを糖化と呼びます)。この糖が、あとで酵母によってアルコールに変わります。麦芽は、いわばビールの甘さのもとであり、エネルギー源です。

もうひとつ、麦芽はビールの色や香ばしさ、コクも決めます。麦芽を焙煎する度合いが浅ければ淡い黄金色に、深く焙煎すればコーヒーやチョコレートを思わせる濃い褐色から黒色になります。黒ビールの色は、この濃色麦芽から来ています。

ホップは苦味と香りと保存性を担う

ホップは、アサ科のつる性植物の毬花(まりばな)です。小さな緑色の松かさのような形をしていて、ビールに欠かせない働きを主に3つ持っています。

苦味の正体は、ホップに含まれるフムロンという成分です。これが煮沸中に、水に溶けやすいイソフムロンへと変化して、あの苦味になります。

水はビールのおよそ9割

ビールは成分のおよそ9割が水です。だから仕込み水の水質、とくに硬度やミネラル成分が、味わいに影響します。一般に、硬水はコクのある濃色ビールに、軟水はまろやかな淡色ビールに向くと言われ、地域ごとの水質が伝統的なスタイルを形づくってきました。ただしこれは傾向であって、絶対のルールではありません。

酵母は糖をアルコールと炭酸に変える

酵母は、麦汁のなかの糖のほとんどを、アルコールと炭酸ガス(二酸化炭素)に分解する微生物です。この発酵によって、ビールにアルコールと自然な炭酸、そして酵母が生む香味成分(フルーティなエステル香など)が加わります。

そして大事なのは、この酵母の種類で、ビールはエールとラガーの2系統に分かれることです。ビールを理解するうえで、ここがいちばん大きな分岐点になります。詳しくは第4章で扱います。


03 ・ HOW IT'S MADE

ビールはどう造られるのか

大まかな流れは、製麦 → 仕込み(糖化・麦汁づくり)→ 煮沸・ホップ添加 → 発酵 → 熟成・貯酒 → ろ過・容器詰めです。下面発酵のビールで、原料から製品までおよそ2〜3か月かかります。ここでも、麦芽が糖、ホップが苦味と香り、酵母がアルコールと炭酸、という各原料の役割が、順に効いてくるのが分かります。

製麦(大麦を麦芽に変える)

まず、大麦を麦芽にします。この工程は3つに分かれます。大麦を水に浸して発芽を促す浸麦、適度に発芽させてでんぷんを糖に変える酵素をつくらせる発芽(この状態を緑麦芽と呼びます)、そして熱風を当てて乾燥させ発芽を止める焙燥(ばいそう)です。焙燥の熱風は80度前後が目安で、この温度や度合いによって麦芽の色や香りが決まり、ビールの色調が方向づけられます。濃色の麦芽ほど、高温で長く焙煎されます。

仕込み(糖化して、麦汁をつくる)

細かく砕いた麦芽(と、米などの副原料)を温水と混ぜ、適した温度で一定時間保ちます。すると麦芽の酵素が働いて、でんぷんが糖に分解され、甘い粥のような状態になります。これをろ過して、糖を多く含む澄んだ甘い液体だけを取り出したものが麦汁(ばくじゅう)です。ちょうど「麦のジュース」のような状態で、この糖が、このあと酵母のエサになります。

煮沸(ここでホップを加える)

取り出した麦汁を煮沸し、この煮沸のときにホップを加えます。ホップは苦味と香りをつけると同時に、麦汁のたんぱく質を固めて分離させ、麦汁を澄ませる働きもします。

ホップは入れるタイミングで役割が変わります。煮沸の早い段階で長く煮るホップは主に苦味を出し、煮沸の終わり近くに後から加えるホップは香りづけの役割が強くなります。醸造家は、この投入のタイミングを分単位で調整して、味と香りを設計しています。

発酵(酵母が糖をアルコールに変える)

熱い麦汁を、発酵に適した温度まで冷やしてから酵母を加えます。酵母が糖を食べて、アルコールと炭酸ガスに変えていきます。この発酵直後の、まだ未熟なビールを「若ビール(ヤングビール)」と呼びます。下面発酵の例では、およそ5度前後まで冷やして酵母を加え、7〜8日ほどで糖の大半がアルコールと炭酸ガスに変わります(これは代表的な目安で、タイプや酵母で前後します)。

熟成・貯酒(寝かせてまろやかにする)

若ビールを貯酒タンクに移し、0度くらいの低温でじっくり寝かせます。下面発酵のビールで、タイプにより数週間から数か月ほど。この間に、若ビール特有の未熟な香りが抜けてまろやかになり、発生する炭酸ガスがビールになじんでいきます。低温で加圧しながら炭酸を溶け込ませることで、あのきめ細かい泡と喉ごしが生まれます。「ラガー(lager)」という言葉は、そもそもドイツ語で「貯蔵する」を意味します。

最後に、熟成の終わったビールをろ過して酵母などを取り除き、透きとおった状態にしてから、瓶・缶・樽に詰めて完成です。全工程でおよそ2〜3か月。ゆっくり時間をかけて造られていることが分かります。


04 ・ STYLE

エールとラガー、主なスタイル

ビールのスタイルは数えきれないほどありますが、いちばん大きく分かれるのは「エール」か「ラガー」かです。決め手は、使う酵母の種類、そしてそれに伴う発酵温度です。

エール(上面発酵)とラガー(下面発酵)

ひとつ補足を。「上面発酵=酵母が上に浮く/下面発酵=底に沈む」というのは伝統的な説明で、イメージとしては正しいのですが、現代の密閉タンクでは見た目でくっきり分かれるわけではありません。本質は酵母の系統(種類)の違いだと押さえておくのが正確です。また発酵温度の数値もあくまで目安で、酵母株やスタイルによって外れる例もあります。そしてエールとラガーは、どちらが上等という話ではありません。単に発酵方法の違いです。日本の大手のいわゆる「ビール」の多くは、下面発酵のラガーです。

代表的なスタイル

ここからは、覚えておくと役立つ代表的なスタイルを、軽い順に見ていきます。


05 ・ IN JAPAN

日本のビールと、ラベルの読み方

第1章で触れたとおり、日本では麦を使った発泡性のお酒が、酒税法上「ビール」「発泡酒」「新ジャンル」に分かれます。ここでは、その違いをもう少し実用的に、そしてラベルの読み方につなげて整理します。

「クラフトビール」は法律用語ではない

まず押さえておきたいのは、「クラフトビール」や「地ビール」は、酒税法などで定められた法律用語ではないということです。大資本の大量生産品と対比して、小規模で個性的なビールを指す通称です。全国地ビール醸造者協議会は目安として、大資本から独立していること、小規模であること、伝統製法や地域の特産品を使った個性的なビールであることなどを挙げています。

日本でこうしたビールが広がったきっかけは、1994年の酒税法改正です。それまでビールの最低製造数量が年2,000klと大きく、小さな醸造所は参入できませんでした。これが年60klに引き下げられ、全国に小さな醸造所が生まれました。一時は「地ビール」ブームで数百社に増え、いったん落ち着いたのち、2010年代以降「クラフトビール」の名で人気が再燃しています。醸造所の数は数え方によって変わりますが、近年は数百から800か所規模まで増えていると言われます。

ラベルの読み方

缶や瓶のラベルには、いくつかの表示が法律で義務づけられています。品目、原材料名、内容量、アルコール分、賞味期限、製造者と所在地、そして「20歳未満の飲酒は禁止」といった注意表示などです。慣れると、ここから中身がかなり読めます。


06 ・ EIGHT BOTTLES

最初に飲み比べたい8本

ビールの幅を体感しやすい8本を選びました。優劣のランキングではなく、ラガーの基準点 → エールの香り → 小麦ビール → 黒ビールという順で、苦味・香り・色・度数の違いを飲み比べで知るための並びです。軽いものから始めて、度数の高いIPAは後半に置くと飲みやすいです。気になった一本は、そのまま酒記に記録して、自分の反応を残していけます。

価格や入手性は時期や流通で大きく変わるため、この記事では固定の価格表記を避けています。限定品や終売もあり得るので、まずは手に入りやすい一本から始めてください。飲み比べのときは、常温に近い温度だと香りが分かりやすく、キンキンに冷やすと苦味やキレが立ちます。同じ一本でも、温度を2、3度変えるだけで印象が変わります。


おわりに

ビールは、麦芽・ホップ・水・酵母というシンプルな素材から、これだけ広い世界をつくります。麦芽で色、ホップで苦味と香り、酵母で香りの方向が決まります。全部を覚える必要はありません。「この苦味はホップだな」「この香りはエール酵母かな」と、飲みながら少し想像できれば十分です。

大切なのは、正解を当てることではなく、自分の好みを知ることです。「すっきりしたピルスナーが好きらしい」「意外とIPAの苦味が心地いい」「黒ビールは思ったより飲みやすい」など、自分の傾向が少しずつ分かってくると、次の一本を選びやすくなります。ラベルの品目や原材料の並びを見れば、中身がかなり読めます。

飲んだ一本を、ぜひ酒記に記録してみてください。銘柄と、その日の一杯と、感じたことを一言で大丈夫です。記録がたまると、次に何を飲むか選びやすくなります。記録を見返しながら、次の一本を選んでみてください。


よくある質問(FAQ)

ビールと発泡酒は、何が違うの?
主な違いは「麦芽の使用割合」と「使える副原料の範囲・量」です。麦芽が50%以上で、認められた副原料を5%以内で使ったものが「ビール」。麦芽が50%未満だったり、認められない副原料や量を使ったものが「発泡酒」になります。味の優劣ではなく、法律上の区分の違いです。
発泡酒って、ビールより品質が低いの?
そうとは限りません。たとえば「水曜日のネコ」は麦芽比率75%のしっかりしたビールですが、副原料のオレンジピールなどが酒税法の範囲を超えるため、品目は「発泡酒」です。発泡酒はあくまで「ビールの枠を外れた麦系の発泡酒」という区分で、安さや品質の低さを意味する言葉ではありません。
エールとラガー、どっちが良いビール?
上下ではなく、発酵方法の違いです。エールは高めの温度で発酵し、フルーティで香り豊か。ラガーは低温で発酵し、すっきりクリアでキレがあります。日本の大手ビールの多くはラガー(ピルスナー系)で、クラフトビールでは香りの豊かなエール系も人気です。好みで選ぶのが正解です。
「第三のビール(新ジャンル)」って、これからどうなるの?
新ジャンルは法律上の正式名称ではなく通称で、2023年10月の改正で酒税額が発泡酒と同額になりました。さらに2026年10月にはビール・発泡酒・新ジャンルの酒税が350ml換算54.25円に統一され、税金の差がなくなります。税差がなくなる分、価格差を理由に選ぶ動機は小さくなっていきます。
ビールが苦手でも飲みやすいのは、どんなタイプ?
苦味が少なく、香りやフルーティさを楽しむタイプがおすすめです。ヴァイツェンやベルジャンホワイトのような小麦系のビールは苦味が控えめで、バナナや柑橘を思わせる香りがあります。逆にIPAは苦味も度数も強めなので、まずは軽いピルスナーや小麦系から試すと入りやすいです。

主な参考・出典

  • 酒税法 第3条第12号(ビールの定義/麦芽・ホップ・水・アルコール分20度未満など)/国税庁「第3条 その他の用語の定義」
  • 国税庁「平成29年度税制改正によるビールの定義の改正に関するQ&A」(麦芽比率67%→50%・追加副原料の5%上限・2018年4月1日施行)
  • 東京国税局「ビール・発泡酒に関するもの」/国税庁「酒税法における酒類の分類及び定義」
  • 財務省「酒税に関する資料」/辻・本郷税理士法人ほか(2026年10月・ビール系飲料の税率統一 350ml換算54.25円)
  • ビール酒造組合「ビールの造り方」「ビールの表示」/サッポロビール(上面発酵・下面発酵の解説)
  • 各社・各ブルワリー公式情報(サッポロビール、アサヒビール、ヤッホーブルーイング、キリン ほか)
  • 全国地ビール醸造者協議会(クラフトビール・地ビールの位置づけ)

本記事の制度・銘柄情報は執筆時点(2026年)の情報です。酒税額・度数・流通状況は変更される場合があります。お酒は20歳になってから、適量を楽しみましょう。

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