SAKE ・ 特定名称
特定名称とアル添のはなし
純米・本醸造・吟醸、そして醸造アルコールの正体
SAKE / 約12分で読めます / 2026
「純米と本醸造、何が違うの」。日本酒売り場でラベルを見比べて、ここで止まってしまう人は多いと思います。純米、吟醸、大吟醸、本醸造。似た言葉が並んでいて、どれがどう違うのか、値段の差が味の差なのかも、なかなか分かりません。
でも、ラベルの言葉が読めると、選ぶのが一気に楽になります。決め手になっているのは、実はたった二つの要素だけです。米に醸造アルコールを加えるかどうかと、米をどれだけ磨いているか。この二つの組み合わせで、呼び名が決まっています。むずかしそうな用語も、意味が分かればただの道しるべです。
この記事では、その二つの軸を中心に、特定名称という分類の地図を描きます。あわせて、いちばん誤解されやすい「醸造アルコール(アル添)」の正体と、戦後の「三増酒」という歴史も整理します。最後に、違いを飲み比べで体感できる6本も選んでいます。
01 ・ NAMES
特定名称酒とは
スーパーの棚に並ぶ日本酒は、大きく「特定名称酒」と「普通酒」に分かれます。国税庁の「清酒の製法品質表示基準」で、原料・製造方法などの違いによって吟醸酒・大吟醸酒・純米酒・純米吟醸酒・純米大吟醸酒・特別純米酒・本醸造酒・特別本醸造酒の8種類が定められていて、決められた要件を満たしたものだけが、この名前を名乗れます。8種類のどれにも当てはまらない、または名乗らない清酒が「普通酒」です。
8種類もあると身構えてしまいますが、覚え方は簡単です。「純米」が付くか付かないかで、まず二つのグループに分けられます。
純米系=米・米こうじ・水だけ
名前に「純米」が付く4種類は、米と米こうじと水だけで造ります。醸造アルコールは一切加えません。
- 純米酒=米・米こうじ・水が原料。精米歩合の規定はありません(後述します)。
- 特別純米酒=精米歩合60%以下、または特別な製造方法。
- 純米吟醸酒=精米歩合60%以下で、吟醸造り。
- 純米大吟醸酒=精米歩合50%以下で、吟醸造り。
本醸造系=米・米こうじ・水+醸造アルコール
名前に「純米」が付かない4種類は、上の原料に醸造アルコールを少量加えます。これが俗に言う「アル添」です。
- 本醸造酒=精米歩合70%以下。
- 特別本醸造酒=精米歩合60%以下、または特別な製造方法。
- 吟醸酒=精米歩合60%以下で、吟醸造り。
- 大吟醸酒=精米歩合50%以下で、吟醸造り。
並べてみると、対応関係が見えてきます。精米歩合50%以下は「大吟醸/純米大吟醸」、60%以下は「吟醸/純米吟醸」、70%以下は「本醸造」。同じ磨きでも、アルコールを加えなければ頭に「純米」が付く、という仕組みです。表にすると分かりやすいと思います。
| 精米歩合(磨き) | 純米系(米・米こうじ・水だけ) | 本醸造系(醸造アルコール添加) |
|---|
| 50%以下+吟醸造り | 純米大吟醸酒 | 大吟醸酒 |
| 60%以下+吟醸造り | 純米吟醸酒 | 吟醸酒 |
| 60%以下 または特別な製法 | 特別純米酒 | 特別本醸造酒 |
| 70%以下 | (なし) | 本醸造酒 |
| 規定なし | 純米酒 | (なし) |
この8種類には、共通する土台のルールもあります。こうじ米の使用割合が15%以上であること(白米の重量に対するこうじ米の重量の割合)と、原料の玄米は3等以上に格付けされたものを使うこと。この二つを満たさないと、そもそも特定名称を名乗れません。品質を担保するための、いわば最低ラインです。
「特別純米」「特別本醸造」の「特別」だけ、少し補足します。これは精米歩合60%以下か、または「特別な製造方法」のどちらかを満たせば名乗れます。ただし「特別な製造方法」で名乗る場合は、その方法をラベルに説明表示する必要があります。何をもって特別とするかに国税庁の明確な数値基準はなく、木槽しぼりや長期発酵といった、各蔵独自の仕込み法に委ねられています。実務上は精米歩合60%以下で名乗るケースが多いようです。
02 ・ ALCOHOL
醸造アルコール(アル添)の正体
ここが、日本酒でいちばん誤解されているところだと思います。「アル添=安酒の水増し」というイメージを持つ人は少なくありません。でも、それは半分は昔の話で、半分は誤解です。順を追って見ていきます。
醸造アルコールって何でできている?
酒税法上の定義では、醸造アルコールは「でんぷん質物または含糖質物を原料として発酵させて蒸留したアルコール」です。実際の原料はサトウキビ由来の廃糖蜜(砂糖を精製するときに出る副産物)が中心で、ほかにトウモロコシやサツマイモなども使われます。製法は焼酎の甲類やラム酒に近い連続式蒸留で、クセの少ない高純度のアルコールになります。工業用の合成アルコールとは別物です。
製成した時点では度数95%前後もあります。ただ、そのままだと消防法上の危険物にあたるため、蔵での保管時は60%ほど、清酒に加えるときにはさらに約30%まで水で薄めて使います。
なぜ加えるのか
目的は、水増しではありません。主に次のような理由からです。
- 香りを引き出すため。吟醸香のような香り成分は、水よりアルコールに溶けやすい性質があります。発酵の末期にアルコールを加えると、酒粕になる固形分側に残りがちな香りが、清酒になる液体側へより多く移り、華やかな香りが引き立ちます。
- 味を軽快にするため。クセがほとんどないので、スッキリと軽快で、飲んだあとスッと消えるキレのある味わいになります。
- 香味を安定させ、保存性を高めるため。腐造(火落ち)を防ぎ、酒質を安定させます。この技術の源流は、江戸時代の「柱焼酎」(もろみや酒粕から造った焼酎を加えて火落ち菌の繁殖を防ぐ技法)にさかのぼるとされます。冷蔵設備のない時代の、保存の知恵でした。
そして大事な数字がひとつあります。特定名称酒に加えてよい醸造アルコールの量は、白米の重量の10%以下(アルコール分95度換算の重量)に制限されています。これを超えて加えると、本醸造や吟醸を名乗れず「普通酒」になります。つまり本醸造や吟醸のアル添は、あくまで香味を整えるための少量の添加で、量を増やすためのものではありません。
「三増酒」という別の話
「アル添=悪酔いする粗悪な酒」というイメージは、戦後に大量に造られた「三増酒(三倍増醸清酒)」から来ています。ここは、今の本醸造とはまったく別物として分けて理解してほしいところです。
三増酒は、米と米こうじで造ったもろみに、清酒と同じくらいの濃さまで薄めた醸造アルコールをたっぷり加え、さらに糖類(ぶどう糖・水あめ)、酸味料(乳酸・コハク酸など)、うま味成分(グルタミン酸ソーダ)を足して味を調え、元の清酒の約3倍量まで増やしたものです。第二次世界大戦後の深刻な米不足を背景に、1949年(昭和24年)に採用され、急速に広まって、1953年(昭和28年)には清酒全生産量の約6割(59.3%)を占めました。
本来の清酒に比べて品質は劣り、「ベタベタと甘く二日酔いする酒」というネガティブなイメージが定着しました。これが1970年代以降の、より高品質な酒を求める流れ(純米酒回帰)につながっていきます。そして2006年(平成18年)の酒税法改正で、清酒に加える醸造アルコール・糖類・酸味料などの副原料の重量合計が「白米重量の50%以下」でなければ清酒と認められなくなり、3倍まで増やすことが不可能になりました。三増酒は基本的に廃止されたわけです。
ここで区別しておきたい数字が二つあります。「白米重量の10%以下」は特定名称酒(本醸造・吟醸など)の上限、いっぽう改正後の清酒全体には「白米1トンあたり醸造アルコール280リットル以下」という別の上限があります。後者はおおむね添加率20〜28%程度にあたり、普通酒はこの範囲で造られます。混同しやすいので、本醸造・吟醸のアル添はごく少量(10%以下)、と覚えておけば十分です。
まとめると、「純米だから良い、アル添だから悪い」という単純な話ではありません。アル添は、狙った香味に仕上げるための正当な醸造技術です。鑑評会で評価される大吟醸にも、醸造アルコールを加えたタイプがあります。昔の三増酒のイメージを、今の本醸造や吟醸にそのまま当てはめるのは、少しもったいない話だと思います。
03 ・ POLISH
精米歩合と磨き
もう一つの軸が精米歩合です。これは「玄米に対する、精米後の白米の重量の割合」を%で表したものです。精米歩合60%といえば、玄米の表層部を40%削り取り、残った芯の60%を使うという意味になります。
なぜ削るのかというと、米の表層部には脂質・たんぱく質・ミネラルなどが多く、これが雑味のもとになるからです。ここを削ることで、雑味が減り、すっきりとした酒になりやすくなります。また、脂質は果実のような吟醸香が生まれるのを抑えてしまうため、よく磨くほど華やかな香りが立ちやすくなります。
ここで初心者がいちばんつまずくポイントを、はっきり書いておきます。精米歩合は、数字が小さいほど「よく磨いている(たくさん削っている)」という、直感と逆の関係です。70%はあまり削っておらず、外側の成分を多く残すので旨味やコクの濃醇な方向に、40%はたくさん削るので、すっきりクリアでフルーティな方向に振れやすい。数字が小さい=たくさん削っている、とだけ覚えておけば混乱しません。
ただし「削るほど良い酒」という単純な話でもありません。表層部は雑味のもとであると同時に、旨味のもとでもあります。磨きすぎると、旨味の乏しい面白味のない酒になることもあります。近年は、あえて8〜9割残す(低精米)個性的な酒もあれば、逆に一桁台まで磨く超高級酒もあります。精米歩合は品質の絶対的な優劣ではなく、「味の方向性」を示す指標と捉えるのが正確です。
この磨きと結びつくのが「吟醸造り」です。国税庁の基準では、よりよく精米した白米を低温でゆっくり発酵させ、特有の芳香(吟香=ぎんか)を持つように吟味して醸造すること、とされています。実務ではおよそ5〜10度で30日以上といった低温長期発酵で、この過程からリンゴやバナナのような果実様の香り「吟醸香」が生まれます。吟醸・大吟醸・純米吟醸・純米大吟醸は、この吟醸造りであることが要件です。
普通酒との違い
ここまでの要件(精米歩合、こうじ米15%以上、醸造アルコール10%以下など)を満たさない、または満たしていてもあえて名乗らない清酒は、すべて「普通酒(一般酒)」に分類されます。醸造アルコールを10%を超えて加えたもの、糖類や酸味料を加えたもの、精米歩合の要件を満たさないものなどが該当します。
大切なのは、普通酒=品質が低い酒、ではないということです。普通酒は日本酒の流通量の多数を占め、日常の晩酌酒の主役です。安価で毎日飲みやすいよう設計されたものが多く、なかには精米歩合60%まで磨いた、吟醸酒並みに丁寧な普通酒もあります。「特定名称を名乗っていないだけ」で、優劣とは別の話だと考えるのが正確です。
ひとつ補足しておくと、純米酒には精米歩合の数値規定がありません。かつては「70%以下」という要件がありましたが、2004年1月施行の基準改正で撤廃されました。今でも古い書籍やサイトには「純米酒=精米歩合70%以下」と書かれたものが残っていますが、これは旧基準で、現在は誤りです。だから「純米だからよく磨いている」とは限りません。
04 ・ LABEL
ラベルと数値の読み方
特定名称と精米歩合が読めれば、ラベルの大半は理解できます。あと少しだけ、味の想像を助けてくれる数字を紹介します。日本酒度と酸度です。裏ラベルによく載っています。
日本酒度=甘辛のおおまかな目安
日本酒度は、日本酒の比重を表す数値です。水の比重を±0(ゼロ)とし、それより重いか軽いかを数値化しています。糖分などのエキス分が多いほど液は重くなり、日本酒度はマイナス(甘口寄り)に、糖分が少ないほど軽くなりプラス(辛口寄り)に振れます。ざっくりした目安として、次のように区分されます。
- −6.0以下あたり=大甘口
- −3.5〜−5.9あたり=甘口
- −1.5〜−3.4あたり=やや甘口
- −1.4〜+1.4あたり=普通
- +1.5〜+3.4あたり=やや辛口
- +3.5〜+5.9あたり=辛口
- +6.0以上あたり=大辛口・超辛口
ただし、この区分は業界で広く使われる目安であって、国税庁が定めた公式の閾値ではありません。体感の甘辛は、酸度やアミノ酸度、アルコール度数、温度、香りによっても大きく変わります。「日本酒度がプラスだから必ず辛い」とは言い切れないので、あくまで方向の目安として受け取るのがちょうどいいです。なお、市販清酒の日本酒度の平均はおおむねプラス寄り(近年の一般酒でおよそ+3.6程度)で、かつての甘口好みから「淡麗辛口」人気を経て、辛口側に落ち着いてきたとされます。
酸度=味の濃さとキレ
酸度は、日本酒に含まれる有機酸(乳酸・コハク酸・リンゴ酸など)の量を相対的に示す数値です。ここは少し勘違いされやすいのですが、「すっぱさ」そのものではなく、味の輪郭やキレの指標と説明されることが多いです。酸度が高いと味が濃く感じられて引き締まり、辛口・濃醇な印象に、酸度が低いと淡麗で柔らかく甘い印象になります。市販清酒の酸度はおおむね0.5〜3.0程度の範囲で、平均は1.2〜1.5前後とされます。
面白いのは、この二つを組み合わせると、甘辛だけでなく「すっきり系か、しっかり系か」まで想像できることです。
- 酸度が低く、日本酒度プラス=淡麗辛口(すっきり切れる)
- 酸度が低く、日本酒度マイナス=淡麗甘口(軽やかで柔らかい)
- 酸度が高く、日本酒度プラス=濃醇辛口(しっかりキレる)
- 酸度が高く、日本酒度マイナス=濃醇甘口(コクのある甘み)
もう一つ、アミノ酸度という数字が載っていることもあります。これはコクや旨味の量の目安で、高いほど濃厚、低いほどすっきり淡麗になります。日本酒度・酸度と並べて、「旨味の濃さ」の軸として見ると、味の想像がさらに立体的になります。とはいえ、数字はどれも目安です。実際にどう感じるかは、飲んでみるのがいちばんです。
05 ・ SIX BOTTLES
飲み比べたい6本
ここまでの「アル添の有無」と「精米歩合の磨き」という二つの軸を、実際に舌で確かめるための6本を選びました。優劣のランキングではなく、純米・本醸造・大吟醸・普通酒の違いを体感するための並びです。どれも実在し、比較的手に入りやすいものを選んでいます。気になった一本は、そのまま酒記に記録して、自分の反応を残していけます。
- 白鶴 まる(白鶴酒造・兵庫)=まずは基準点になる普通酒から。原材料表示に「醸造アルコール、糖類/酸味料」と書かれていて、特定名称酒には使えない糖類・酸味料が入っています。裏ラベルの原材料欄を、このあとの純米酒・本醸造酒と見比べると、違いが一目で分かります。日常の晩酌酒として、国産米100%でうまみとキレを設計した一本です。
- 清酒 八海山(八海醸造・新潟)=同じ「普通酒」でも、こちらは精米歩合60%まで磨いた一本。「普通酒=低品質」という思い込みを崩してくれる好例です。淡麗ですっきりなめらか。白鶴まると飲み比べると、同じ普通酒でも幅があることが分かります。
- 澤乃井 本醸造(小澤酒造・東京)=ここからが特定名称酒です。本醸造は米・米こうじ・水に、少量の醸造アルコールを加えたタイプ。定番の辛口ですっきりした香りで、アル添がもたらす軽快なキレを体感できます。次の特別純米と同じ蔵で飲み比べられるのが、この選び方のポイントです。
- 澤乃井 特別純米(小澤酒造・東京)=上の本醸造と同じ蔵・同じ水・同じ造り手で、醸造アルコールを加えない純米タイプ(精米歩合60%)。しっとりと豊かで、米の旨味がのっています。本醸造と並べて飲むと、「アル添のあり/なし」だけの違いが、いちばんクリアに分かります。この2本の対比が、この記事の核心です。
- 獺祭 純米大吟醸45(旭酒造・山口)=山田錦を精米歩合45%まで磨いた純米大吟醸。よく磨いた米ならではの、華やかでフルーティな香りとクリアな味わいを体感できます。上の特別純米(60%)と比べると、同じ「純米系」でも磨きが進むとどう変わるかが分かります。
- 獺祭 磨き二割三分(旭酒造・山口)=精米歩合23%。玄米の8割近くを削り取った、純米大吟醸の極みです。獺祭は全商品が純米大吟醸なので、45との飲み比べはアル添の変数を固定して、磨きだけの違いを見られる貴重な組み合わせです。驚くほどクリアで、上品で繊細な味わいと評されます。磨きの果てを一度知っておくと、味の物差しになります。
飲み方の提案です。棚に並べる順に白鶴まる → 清酒 八海山 → 澤乃井 本醸造 → 澤乃井 特別純米 → 獺祭45 → 獺祭 磨き二割三分と少しずつ試すと、普通酒から純米大吟醸まで、味わいがだんだん軽くクリアになっていく流れが分かります。全部を一度にそろえると高くつくので、まずは澤乃井の本醸造と特別純米(アル添あり/なしの直接対決)から始めるのがおすすめです。なお価格や度数・精米歩合は改定されることがあるので、購入時は各蔵の最新表示で確認してください。
おわりに
特定名称は、難しい暗号ではありません。「純米が付くか=アル添の有無」と「精米歩合の数字=磨きの度合い(小さいほど削っている)」。この二つの軸だけで、8種類の名前はすらすら読めるようになります。棚の前で迷ったら、まずラベルのこの二点を見てみてください。
そして、忘れないでほしいことがあります。純米もアル添も、上下ではなく方向の違いです。よく磨いた酒と磨きを抑えた酒も同じで、どちらが正解というものではありません。アル添は香りとキレを設計する技術ですし、あえて磨かず旨味を残す純米もあります。どれが「正解」かではなく、自分がどれを好きかを知ることのほうが、ずっと役に立ちます。
飲んだ一本を、ぜひ酒記に記録してみてください。銘柄と、特定名称の種類(純米か本醸造か)、精米歩合、そしてその日に感じたことを一言で大丈夫です。記録がたまってくると、「自分は磨いた吟醸系が好きらしい」「本醸造のキレが食事に合う」といった傾向が見えてきます。特定名称も日本酒度も酸度も、自分の好みを知るための手がかりです。次の一本を選ぶとき、その手がかりが役に立ちます。
よくある質問(FAQ)
純米酒と本醸造酒、どちらが良いお酒ですか?
上下ではありません。純米酒は米・米こうじ・水だけで造る酒、本醸造酒は少量の醸造アルコール(白米重量の10%以下)を加えて香りを立て、キレを良くしたものです。どちらにも高品質な酒があり、好みと料理で選ぶのが正解です。
「アル添」だと悪酔いすると聞きましたが本当ですか?
それは戦後の「三増酒」のイメージが独り歩きしたものです。三増酒は醸造アルコールに加えて糖類・酸味料を大量に足し、量を約3倍に増やした酒で、2006年の酒税法改正で事実上なくなりました。現在の本醸造・吟醸のアル添は白米重量の10%以下という少量で、香りとキレのための技術です。両者は別物として考えるのが正確です。
精米歩合の数字は、小さいほど良いお酒ですか?
数字が小さいほど米を多く削っています(雑味が減り、香りが立ちやすい)。ただし「良い=高い」ではありません。表層部は雑味のもとであると同時に旨味のもとでもあり、あえて磨きを抑えて米の旨味を活かす酒もあります。数字は味の方向性の目安で、順位ではありません。
普通酒は品質の低いお酒ですか?
いいえ。普通酒は「特定名称を名乗らない清酒」というだけで、品質が低いという意味ではありません。日本酒流通量の多数を占める日常の晩酌酒で、なかには精米歩合60%まで磨いた丁寧なものもあります。安価で毎日飲みやすく設計された、優秀な普通酒はたくさんあります。
日本酒度がプラスなら辛口ということですか?
日本酒度は比重(糖分)の目安で、プラスは辛口寄りの傾向を示します。ただし体感の甘辛は酸度・アミノ酸度・アルコール度数・温度・香りでも変わるため、数字だけで甘辛は決まりません。国税庁が定めた公式の甘辛区分ではなく、あくまで方向の目安として受け取るのがちょうどよいです。
主な参考・出典
- 国税庁「清酒の製法品質表示基準」の概要(特定名称8種類・精米歩合・こうじ米使用割合15%以上・醸造アルコールの上限10%・吟醸造りの定義など)
- 東京国税局「日本酒(清酒)に関するもの」(精米歩合・特定名称・吟醸造りの解説)
- 日本酒造組合中央会(JSS)「日本酒の分類」
- 月桂冠「吟醸・純米・本醸造とは」「日本酒度・酸度・アミノ酸度とは」
- SAKE Street「醸造アルコールとは」「合成清酒と三増酒」「日本酒の精米歩合とは」「日本酒度とは」
- 旭酒造 KUBOTAYA マガジン(醸造アルコール・日本酒度の解説)/菊正宗(アル添の効用)
- SAKETIMES(特別純米・特別本醸造、三増酒シリーズ、獺祭・八海山の飲み比べ)
- Wikipedia「三倍増醸清酒」(三増酒の中身・1949年採用・2006年改正での実質廃止・副原料50%以下ルール)
- 各蔵・各社公式情報(旭酒造、八海醸造、白鶴酒造、小澤酒造 ほか)
本記事の制度・銘柄情報は執筆時点(2026年)の情報です。精米歩合・度数・価格・流通状況は変更される場合があります。日本酒度・酸度の平均値や甘辛の目安は業界で広く使われる参考値で、法定の区分ではありません。確認できた事実を土台にし、確証の取れない通説は「〜とされる」と書き分けています。お酒は20歳になってから、適量を楽しみましょう。