BEER ・ スタイル

ビアスタイル図鑑

ラガーとエール、その先の多彩な世界

BEER / 約13分で読めます / 2026

「エール」と「ラガー」。この2語が分かるだけで、ビールの棚がぐっと見通しよくなります。あとは好みのスタイルを探すだけです。ピルスナーやヘレス、IPA、スタウト、ヴァイツェンといった横文字も、じつはこの2つの家系のどこかに収まります。居酒屋のメニューやクラフトビールの缶に並ぶ名前は、そのどれかに当てはまるのです。

世界には150を超えるビアスタイルがあると言われます。数だけ聞くと途方もないですが、地図があれば迷いません。この記事では、まず発酵方法による2大家系(ラガーとエール)を押さえ、そのうえで代表的なスタイルを色の淡い順・度数の低い順に並べていきます。最後に、日本で通年買える銘柄で違いを飲み比べる案も用意しました。

本記事は確認できた事実を土台にしています。数値は醸造コンテストの国際基準であるBJCP(Beer Judge Certification Program)2015/2021スタイルガイドラインの公式値をもとにし、歴史や語源、日本の制度についても専門媒体や国税庁・財務省の資料で確かめました。確証の取れない通説は「〜と言われる」と正直に書き分けます。発酵温度などの数字は酵母やタイプで幅が出るので、「目安」として読んでください。


01 ・ TWO FAMILIES

スタイルの2大家系(ラガーとエール)

ビールのスタイルを整理する、いちばん基本の分け方が発酵方法による2分類です。下面発酵で造ったものをラガー、上面発酵で造ったものをエールと呼びます。この2つは、そもそも使う酵母の種類が違います。

「上面・下面」という呼び名は、発酵中の酵母のふるまいに由来します。上面発酵の酵母は発酵中に麦汁の上のほうへ浮き上がりやすく、下面発酵の酵母はタンクの底のほうへ沈んでいきやすい。この見た目の挙動が名前のもとになったと言われます。ただし現代の醸造では、これはやや単純化した説明で、本質は酵母の性質や低温への強さの違いにあるとされます。名前の由来として覚えておくとよい、くらいの受け止めが安全です。

味わいの方向が違う

発酵温度が違うと、酵母が生む香りの成分が変わります。エールは高めの温度で発酵するため、酵母がフルーティーな香り成分(エステル)やスパイシーな成分(フェノール)を多く生みます。結果として香りやコクが強く、複雑な仕上がりになりやすい。ドイツの小麦エールに出るバナナやバブルガムのような香りは、その典型例です。

ラガーは低めの温度で発酵するため、酵母由来の香味が控えめになります。雑味の少ないクリーンですっきりした(クリスプな)味わいになりやすく、素材の輪郭がくっきり出ます。ひとことでいえば、エールは華やかで複雑、ラガーはすっきりクリア、という方向の違いです。

造るのにかかる時間も違う

エールは発酵が短めで、主発酵はおよそ数日、全体でも比較的短期間で仕上がります。ラガーは低温のぶん発酵に時間がかかり、そのうえ0度近くで数週間以上ゆっくり寝かせる「熟成(ラガリング)」の工程が加わります。「ラガー」という名前自体、ドイツ語のlagern(貯蔵する)から来ています。この長い低温熟成が、あのクリアで雑味の少ない味を作ります。

歴史はエールが先、主役の座はラガーへ

歴史的にはエールのほうが古く、下面発酵のラガーは中世以降に始まったと言われます。低温発酵は雑菌が繁殖しにくく、品質を安定させやすいうえ大量生産にも向くため、冷却技術が普及した19世紀以降に世界的な主流になりました。いまや世界のビールの多くはラガーで、日本の大手メーカーの主力ビールも、その大半がラガーの一種であるピルスナーです。いつも飲んでいるあの一杯も、じつはピルスナーというスタイルだった、というわけです。

なお少し専門的な話として、ラガー酵母(サッカロミセス・パストリアヌス)は、エール酵母と、低温に強い別の野生酵母(サッカロミセス・エウバヤヌス)が自然に交雑してできた酵母だとする学説があります。2011年にこの野生酵母が発見されて以降に確立した見方で、入門としては「ラガー酵母は交雑でできた低温に強い酵母」と押さえておけば十分です。

ひとつ注意したいのは、この「ラガー/エール」はあくまで醸造上の分類で、日本の酒税法上の区分とは別物だということです。酒税法で「ビール」か「発泡酒」かを分けるのは、発酵方法ではなく麦芽の割合と副原料の範囲です。スタイルの話と税制の話は、混同しないようにしたいところです。


02 ・ LAGER

ラガーの仲間

ラガーは、下面発酵酵母を低温で発酵させ、さらに低温で長く寝かせたビールの総称です。ここでは代表的なスタイルを、色の淡い順(ピルスナー、ヘレス、ウィーン、デュンケル、シュヴァルツの順)と、度数の強い系統(ボックの仲間)に分けて見ていきます。数値はBJCPの公式値で、色はSRM(数字が大きいほど濃色)、苦味はIBU、度数はABV(アルコール度数)です。

ピルスナー(チェコ式)=黄金色ラガーの原型

まずは澄んだ黄金色が身上のスタイルです。1842年、チェコのプルゼニ(ドイツ語でピルゼン)で生まれた、世界初の澄んだ黄金色のラガーです。地元の醸造家が品質への不満から新しい醸造所を建て、バイエルンから招いた醸造家ヨーゼフ・グロルが造ったのが始まりと言われます。淡色麦芽、軟水、ザーツというホップ、下面発酵酵母。この組み合わせで、それまでになかった透明感のある黄金色のビールが誕生しました。現代のラガーの原型であり、世界で最も普及したスタイルのひとつです。

味わいは、麦芽のコクとボディがあり、後味はふくよかで柔らかめ。BJCPのチェコ・プレミアム・ペール・ラガーは、ABVおよそ4.2〜5.8%、IBU 30〜45、色SRM 3.5〜6です。代表例はピルスナー・ウルケル(輸出版でアルコールおよそ4.4%、およそ40 IBU)。この銘柄は、プルゼニ産の元祖という意味で「ウルケル(=元祖)」を名乗る唯一のピルスナーです。

ジャーマン・ピルス(ドイツ式)=より軽く辛口

チェコ式がドイツに渡って、その土地の硬めの水と自国産ホップに合わせて発展したのがジャーマン・ピルスです。チェコ式に比べて色も体も軽く、より辛口でキレがあり、苦味が長く残り、炭酸も強めになります。麦わら色から淡い金色で、泡もちがよい。BJCPではABVおよそ4.4〜5.2%、IBU 22〜40、色SRM 2〜5です。代表例はケーニッヒ・ピルスナー。初心者向けにまとめると、「チェコ=やや麦芽リッチで柔らか、ドイツ=より軽くドライで苦味シャープ」という対比で覚えられます。

ヘレス=麦芽の甘み主体でホップ控えめ

「Helles」はドイツ語で明るい・淡いという意味。ミュンヘンの定番の淡色ラガーです。1894年、ミュンヘンのシュパーテン醸造所が、淡色のピルスナー系に対抗して開発したと言われます。パンのような穀物の甘い香りが主役で、苦味は控えめ、後味はドライ。ピルスナーと比べると、より飲みごたえ(ボディ)があって麦芽感が強く、ホップは弱めです。BJCPではABVおよそ4.7〜5.4%、IBU 16〜22(ピルスナーより低い)、色SRM 3〜5。代表例はアウグスティナー・ラガービア・ヘル。

ウィーン・ラガー=琥珀色のラガー

1841年にオーストリアのアントン・ドレーアーが開発した、琥珀色から赤褐色の中くらいのラガーです。ウィーン麦芽由来の穏やかなトースト感があり、ローストやキャラメルの強い風味はありません。ABVはおよそ4.8〜5.4%。面白いことに、発祥地オーストリアではほぼ廃れ、いまではメキシコが本場と言われます。中欧からの移民が19世紀に持ち込んだと語られますが、伝来の経緯や時期には諸説あり、はっきりとは分かっていません。

ひとつ注意点があります。有名なネグラ・モデロを「ウィーン・ラガーの代表」と紹介する解説をよく見かけますが、醸造元自身はこれをミュンヘン・デュンケルと位置づけているため、代表例として断定するのは避けておきます。

デュンケル=バイエルン伝統の濃色ラガー

「Dunkel」はドイツ語で暗い・濃いの意味。ミュンヘンの伝統的な茶色のラガーで、淡色のヘレスよりも古いスタイルです。濃色のミュンヘン麦芽から、トーストしたパンの耳やチョコ、ナッツ、キャラメルを思わせる複雑な麦芽の甘みが主役になります。焦げ臭さは出さず、苦味と甘みのバランスが取れて、後味はドライ。BJCPではABVおよそ4.5〜5.6%、IBU 18〜28、色SRM 14〜28。代表例はアインガー・アルトバイリッシュ・デュンケル。

シュヴァルツビア=辛口で軽やかな黒ビール

「Schwarzbier」はドイツ語でそのまま黒いビール。デュンケルよりさらに黒く、ほぼ黒から濃い茶色(ルビーやガーネットの色調)です。ビターチョコやコーヒーを思わせる控えめなロースト香と、乾いた後味が持ち味です。デュンケルと比べるとより黒く、よりドライで、ボディは軽く、ロースト感が明確。ただし焦げ臭さは出さないのが目安です。BJCPではABVおよそ4.4〜5.4%、IBU 20〜30、色SRM 17〜30。代表例はケストリッツァー・シュヴァルツビア。

ボックの仲間=麦芽の甘みが濃い、強めのラガー

ボックは、麦芽の甘みが濃厚な強めの濃色ラガーです。起源は北ドイツの醸造都市アインベック(Einbeck)。17世紀にミュンヘンで再現されたとき、アインベックのバイエルン訛りから「Bock」の名が定着したと言われます。「Bock」はドイツ語で雄ヤギの意味も持つので、多くの醸造所がロゴやラベルにヤギを描いています。ただしスタイル名の直接の語源は地名アインベックのほうで、雄ヤギはあくまでラベルの図案の由来です。ボックには派生スタイルが多いので、まとめて見ておきます。


03 ・ ALE

エールの仲間

エールは、上面発酵酵母を高めの温度で発酵させたビールの総称です。酵母が生む華やかな香りやコクを楽しむスタイルが多く、ホップの効いたものから小麦を使ったもの、濃色でロースト香の強いものまで、幅がとても広い。ここでは入門で押さえたい代表スタイルを見ていきます。

ペールエール(アメリカン)=ホップの香りが主役

ホップの香りと味を前面に出した、中くらいの強さのエールです。柑橘や花、松、トロピカルフルーツなどを思わせるアメリカンホップの香りが特徴で、色は淡い黄金色から薄い琥珀色。IPAより口当たりが親しみやすい、ホップ主体のクラフトビールという位置づけで、クラフト入門の定番です。BJCP 18B American Pale Aleは、ABVおよそ4.5〜6.2%、IBU 30〜50、色SRM 5〜10です。

IPA(インディア・ペールエール/アメリカン)=はっきり苦く、華やかに香る

ホップを強く効かせた、苦味も香りもアルコールも強めのペールエールです。総評は「はっきりホッピーで苦い、中くらいに強いアメリカンペールエール」。現代のアメリカ系ホップを主役にした、華やかで苦いスタイルで、ペールエールの兄貴分と考えると分かりやすい。BJCP 21A American IPAは、ABVおよそ5.5〜7.5%、IBU 40〜70、色SRM 6〜14です。

IPAには「インドへの長い航海に耐えられるよう、ホップを強く効かせて生まれた」という起源話がよく語られます。ホップを多めに使うとビールが長持ちしたのは事実ですが、これは部分的に本当で、かなり誇張された通説でもあります。当時のイギリスでは、ホップ多めで比重の高い淡色エールは輸出先に関わらず一般的な手法で、IPA専用の発明ではありませんでした。黒ビールのポーターも問題なくインドへ運ばれています。ビール史家のマーティン・コーネルは、インド向けの腐敗問題を解決するために開発されたという証拠は見つからないとしています。飲み屋でよく聞く話ですが、鵜呑みにはしないほうがよさそうです。

ヘイジーIPA(ニューイングランドIPA)=濁って柔らかく、フルーティー

2010年代にアメリカ・ニューイングランド地方で人気になった、新しいIPAです。ストーンフルーツやトロピカルフルーツ、柑橘の強い香りと、なめらかで柔らかいボディが特徴で、しばしば不透明なほど濁ります(ただし泥っぽい濁りすぎはよくないとされます)。従来のIPAより苦味が控えめに感じられるのがポイントで、原型はザ・アルケミスト社の「ヘディ・トッパー」だと言われます。IPAは苦くて苦手、という人でも入りやすいスタイルです。BJCP 21C Hazy IPAが該当します。

スタウトとポーター=濃色でロースト香が強いエール

スタウトは、濃色でロースト香が強いエールです。BJCPによれば「甘く、ボディがあり、ややロースティなエールで、コーヒー&クリームや加糖エスプレッソを思わせる」とされ、コーヒーやダークチョコレートを思わせる風味が語られます。アメリカンスタウトは焙煎が強く、苦味やホップも効いて、風味が濃いのが特徴です。

ポーターは、スタウトと同じ濃色系ですが、コーヒー感よりチョコレート寄りで、やや穏やかとされます。18世紀初頭のロンドンで生まれた濃色ビールで、名前はロンドンの荷運び人夫(porter)に人気だったからだと言われます。

この2つの歴史は地続きです。もともと「スタウト」は「強い」という意味で、強めのポーターを「スタウト・ポーター」と呼んだのが短縮されて「スタウト」になったと言われます。あの有名なギネスの看板銘柄も、当初は「エクストラ・スーペリア・ポーター」で、1840年に「エクストラ・スタウト」へ改称されました。現代では両者はほぼ同じ意味で使われることもあり、明確な公式定義の差はありません。「こう違う」と一律に断定はできず、ブルワリーによって呼び分けが異なる、というのが実情です。

ヴァイツェン(ヴァイスビア)=バナナとクローブの香りの白ビール

小麦を使ったドイツの白ビールです。専用の小麦酵母が、バナナのような香り(イソアミルアセテート)とクローブ(丁子)のような香り(4-ビニルグアイアコール)を生みます。発酵温度が高め(22〜24度)だとバナナ寄り、低め(17〜19度)だとクローブ寄りになると言われます。小麦由来の柔らかさとクリーミーな泡、低い苦味が身上で、ビールの苦味が苦手な人にもすすめやすいスタイルです。BJCP 10A Weissbierは、IBU 8〜15、色SRM 2〜6と、苦味はごく弱い。

ベルジャンホワイト(ウィットビア)=コリアンダーとオレンジピールの白ビール

ベルギーの白ビールで、小麦にコリアンダーとオレンジピールを加えます。コリアンダーと(甘・苦)オレンジピールの香り、未精麦の小麦由来のやさしい酸味とパンのような風味、白濁が特徴です。バナナ香はヴァイツェンより控えめ。爽やかで軽く、ビールが苦手な人にも飲みやすい入口です。BJCP 24A Witbierは、IBU 8〜20、色SRM 2〜4。ヒューガルデンが代表例としてよく挙げられます。

セゾン=農家のビール、よく乾いた辛口

ベルギー・ワロン地方の農家で、夏の農作業をする労働者向けに造られた「農家のビール」です。柑橘系のフルーティーなエステルと、クローブより胡椒(ペッパー)寄りの酵母由来のスパイシーな香りが個性です。発酵度がとても高く、決して甘く終わらないドライな後味が必須とされます。もとは農作業の時期に飲む、供給用の低アルコールのエールでした。BJCP 25B Saisonは、標準版でABVおよそ5.0〜7.0%、IBU 20〜35です。


04 ・ IBU

苦味と度数の見方(IBU)

ビールのラベルや解説で見かけるIBUは、International Bitterness Units(国際苦味単位)の略で、ホップ由来の苦味成分の量を測る指標です。実用上、1 IBUはビール中のイソα酸(苦味成分)およそ1mg/L(1ppm)に相当します。ホップの投入量と煮沸時間から計算・測定される、化学的な数値です。

IBUは「入れた苦味の量」であって、感じる苦味そのものではない

ここが初心者のいちばんの落とし穴です。IBUは測定された苦味であって、実際に舌で感じる苦味(体感の苦味)とは必ずしも一致しません。残っている糖(甘み)、ロースト香、炭酸、水質、ほかのホップ成分などが、感じ方を大きく左右するからです。IBUが高くても、甘みが強ければそれほど苦く感じませんし、IBUが低くても苦く感じることがあります。専門書の『The Oxford Companion to Beer』は、IBUを「実験室のための指標で、実験室を出ることを意図していなかった」と表現しています。「IBU=そのまま苦さ」ではない、これだけは覚えておきたいところです。

スタイル別のIBUのおおよその目安

とはいえ、スタイルごとの苦味の順番を知るには便利な指標です。『The Oxford Companion to Beer』によるおおよその目安を、苦味の弱い順に並べます。

IBUのスケールはおおよそ0〜120程度で表されます。人間の舌が感じ取れる範囲は、だいたい100前後で頭打ちになるとされ、それ以上入れても差を感じにくくなると言われます。数字を「苦さそのもの」と受け取らず、「ホップをどれくらい効かせたスタイルか」の目安として眺めるのが、ちょうどよい距離感です。


05 ・ SIX BOTTLES

スタイルを飲み比べる6本

ここまで見てきた主要スタイルを、日本で通年買いやすい実在の銘柄で飲み比べる案です。ランキングではなく、スタイルの違いを体で覚えるための並びです。淡色ラガーから始めて、ホップの効いたエール、小麦や柑橘の白ビール、最後に濃色系という順で試すと、味の輪郭がつかみやすいはずです。

もう1本、同じピルスナーで飲み比べたいならザ・プレミアム・モルツ(麦芽100%・アルコール5.5%)を並べると、同じスタイルでも香味の違いが見えて面白いです。

濃色系でもう1本試すなら、ヱビス プレミアムブラック(アルコール5.0%)も選択肢です。これは厳密にはエール発酵のスタウトではなく、ラガー系のシュヴァルツ(黒ラガー)にあたります。同じ「黒ビール」でも発酵の家系が違う、という良い例になります。

もし1つの蔵で複数スタイルを飲み比べたいなら、木内酒造(茨城)の常陸野ネストビールがおすすめです。ペールエール(アルコール5.5%)、酵母入りのヴァイツェン、赤褐色のアンバーエールなど定番スタイルがそろい、飲み比べセットも通販で手に入ります。35カ国以上に輸出される、国産クラフトの代表格です。

銘柄の度数は、公式表示のあるものはそれに、一部はメーカーの一般的な表示に基づいています。時期や流通で変わることがあるので、正確な数値は購入時にラベルで確認してください。とくに「ギネス ドラフト(缶)」と「ギネス エクストラ/オリジナル スタウト」(アルコールおよそ6%)は別商品で度数が違います。ここで指しているのは缶のドラフトのほうです。


おわりに

ビアスタイルの地図は、たった2本の柱から広がっています。すっきりクリアなラガーと、華やかで複雑なエールの2つが軸です。この2大家系を軸に、色の淡い順、度数の低い順、苦味(IBU)の弱い順で並べ直せば、初めて見るスタイル名でも「だいたいこのあたりの味かな」と見当がつくようになります。

次にお店や棚でビールを選ぶときは、まず「エールかラガーか」を確かめて、そこから色や苦味の目安で当たりをつけてみてください。飲んでみて「思ったより苦くなかった」「この香りが好きだった」と気づいたら、それがあなたの好みの手がかりです。銘柄と、その日の感想をひとこと書き添えておくだけで、次の一本が選びやすくなります。


よくある質問(FAQ)

エールとラガーは、結局どこが違うの?
使う酵母と発酵温度が違います。エールは上面発酵の酵母を高め(目安15〜25度)で発酵させ、華やかで複雑な味に。ラガーは下面発酵の酵母を低め(目安5〜13度)で発酵させ、さらに低温で長く寝かせて、すっきりクリアな味になります。ピルスナーやヘレスはラガー、ペールエールやIPA、スタウト、ヴァイツェンはエールの仲間です。
日本のいつものビールは、どのスタイル?
大手メーカーの主力ビールは、その大半がラガーの一種であるピルスナーです。ヱビスやザ・プレミアム・モルツも、ピルスナースタイルに分類されます。いつも飲んでいる一杯も、じつはピルスナーというスタイルだったというわけです。
IPAはどうしてあんなに苦いの?
ホップを強く効かせて造るスタイルだからです。BJCPの基準でIBUはおよそ40〜70と、ペールエールより苦味も香りも強く設計されています。ただしIBUは「入れた苦味成分の量」の目安で、甘みや香りによって体感の苦さは変わります。苦味が苦手なら、濁って柔らかいヘイジーIPAから試すと入りやすいです。
IBUの数字が高いほど苦く感じるの?
必ずしもそうではありません。IBUは測定された苦味成分の量で、実際に感じる苦味とは別です。残った糖の甘み、ロースト香、炭酸、水質などで感じ方が変わるため、IBUが高くても甘みが強ければ苦く感じにくいことがあります。スタイル同士の苦味の順番を知る目安として使うのがちょうどよいです。
スタウトとポーターは何が違うの?
明確な公式定義の差はありません。歴史的に地続きで、もともと「スタウト」は「強い」という意味で、強めのポーターを短縮した呼び名でした。ざっくりした傾向として、スタウトはコーヒー寄り、ポーターはチョコレート寄りで穏やか、と言われますが、ブルワリーによって呼び分けが異なります。一律に「こう違う」とは断定できないスタイルです。

主な参考・出典

  • BJCP(Beer Judge Certification Program)2015/2021 スタイルガイドライン(各スタイルのABV・IBU・SRMの数値、総評)
  • サッポロビール 公式FAQ「上面発酵、下面発酵とはなんですか?」(発酵方法・酵母・温度・名前の由来)
  • American Homebrewers Association「Ale vs Lager」(エールとラガーの違い・発酵温度と期間)
  • The Oxford Companion to Beer(IBUの定義、スタイル別IBU目安、体感苦味との違い)
  • VinePair/Brew Your Own/All About Beer(ボック各種・ウィーンラガー・ヘイジーIPAなどの歴史と特徴)
  • Wikipedia(Lager/Pilsner Urquell/Helles/Porter〔beer〕/India pale ale/Saccharomyces pastorianus ほか)
  • 国税庁「酒税法における酒類の分類及び定義」(ラガー・エールは酒税法上の区分ではない点)/財務省 酒税資料(2026年10月の税率一本化)
  • 各社公式情報(サッポロビール、サントリー、ヤッホーブルーイング、木内酒造、ギネス ほか・飲み比べ銘柄の情報)

本記事のスタイルの数値や銘柄情報は執筆時点(2026年)の情報で、度数・流通状況は変更される場合があります。スタイル分類は味・色・度数による醸造上の分類で、日本の酒税法上の「ビール/発泡酒/新ジャンル」の区分とは別の話です。お酒は20歳になってから、適量を楽しみましょう。

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