WINE ・ 産地

産地で選ぶワイン

旧世界と新世界、ラベルの読み分け

WINE / 約13分で読めます / 2026

ワイン売り場に立つと、ラベルに書かれた言葉の多さに戸惑うことがあります。ある瓶には「シャブリ」や「バローロ」といった地名らしきものが大きく書かれ、別の瓶には「シャルドネ」や「カベルネ・ソーヴィニヨン」といったブドウの名前が書かれています。この違いには理由があります。理由が分かると、飲む前からそのワインの性格がある程度読めるようになります。

手がかりになるのが「旧世界」と「新世界」という考え方です。ヨーロッパの老舗の産地を旧世界、大航海時代以降に新しくワイン造りを始めた国々を新世界と呼びます。同じ品種でも、産地が違えば味が変わります。この地図を頭に入れておくと、ラベルの読み方が一段深くなります。

本記事は確認できた事実を土台にしています。ただしワインの味わいには例外が多く、後で触れるように「旧世界と新世界」の線引きも近年はかなり曖昧になっています。ここで紹介するのは、あくまで大まかな傾向の目安として読んでください。


01 ・ OLD VS NEW

旧世界と新世界、ラベルと味の違い

旧世界とは、ワイン造りの歴史が古いヨーロッパ中心の国々を指します。フランス、イタリア、スペイン、ドイツ、ポルトガル、オーストリア、ギリシャなどが代表です。これらの国では紀元前からワインが造られてきました。

一方の新世界は、15世紀から17世紀ごろの大航海時代以降に、ブドウ栽培とワイン醸造が伝わった国々です。アメリカ、チリ、アルゼンチン、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、そして日本などが含まれます。

ラベルの書き方が違う

初心者にとって最も役に立つ違いが、ラベルの書き方です。旧世界は「産地名」、新世界は「ブドウ品種名」を大きく表示することが多いという傾向があります。

たとえば旧世界のシャブリはシャルドネから、ジュヴレ・シャンベルタンはピノ・ノワールから、プイィ・フュメはソーヴィニヨン・ブランから造られます。旧世界では、産地名を見れば品種が分かるという前提で書かれています。これに対して新世界は「シャルドネ」「ピノ・ノワール」のように品種名をそのまま出すので、初心者にはむしろ分かりやすくなっています。

なぜこの差が生まれるのでしょうか。旧世界の造り手は、土地(テロワール)が品種より重要だという思想を持っています。知識のある買い手なら産地から品種が分かると想定して売っています。新世界は、ヨーロッパの細かい地名よりも品種名の方が伝わる客層に向けて売るため、品種を前面に出しています。

味わいの傾向は気候で決まる

味わいの傾向としては、旧世界は酸味やミネラル感、土やハーブのような複雑さを持つエレガントなスタイル、新世界は完熟した果実味でパワフルかつ分かりやすいスタイル、と言われます。

この差の主な原因は気候です。冷涼な気候だとブドウの糖度が上がりきらず、酸が残るため、発酵後のアルコールも低めで、軽やかな口当たりになりやすくなります。逆に温暖だと、ブドウが早く熟して糖度が高くなり、熟した果実味が出て、アルコールも高く、飲みごたえのあるフルボディになりやすくなります。白でも12〜15%になる例があるほどです。

アルコール度数の目安としては、旧世界はおよそ12〜13.5%、新世界は14.5%以上になることも多いと言われます。ただしこの数値は業界メディアが挙げる目安で、品種や生産者によって大きく変わります。数字はあくまで傾向として受け止めてください。

制度と食との関係

旧世界には産地ごとの厳格な原産地呼称制度があります。フランスのAOC、イタリアのDOC・DOCG、スペインのDO・DOCaなどで、許可される品種、収量、醸造法まで細かく規定します。これらは品質の階層を持っています。新世界にも産地区分はあります。たとえばアメリカのAVAですが、これは栽培地域の地理的な範囲を示すもので、品質のランクづけはしていません。新世界の造り手は醸造法の自由度が高く、新しい技術や実験的な手法を取り入れやすいと言われます。

食との関係も語られます。旧世界は酸やミネラルがあり料理を引き立てる食中酒向き、新世界は果実味とボディが豊かでワイン単体でも楽しめるものが多い、という整理です。

近年はこの二分法がかなり曖昧になっている

ここで大切な注意があります。この二分法は近年かなり曖昧になっており、初心者向けの目安として扱うのが安全です。良いワインほど、どちらの型にもきれいに収まりません。カリフォルニアではアルコールを下げ、新しい樽の使用を減らす動きがあり、気候変動でブルゴーニュやボルドーも完熟寄りになってきています。旧世界も温度管理できるタンクを導入していますし、半球を越えて技術を共有する造り手も増えています。ですから「旧世界はこう、新世界はこう」と決めつけず、大まかな傾向として楽しむのがおすすめです。


02 ・ OLD WORLD

フランス・イタリア・スペインの産地

旧世界の魅力は、同じ国の中でも産地ごとに主役の品種と造り方が変わることです。ラベルの地名が分かれば味の見当がつく、というのはこの積み重ねがあるからです。代表的な産地を国ごとに見ていきます。

フランス

ボルドーは、複数品種のブレンドが基本です。赤はカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローを主体に、カベルネ・フラン、プティ・ヴェルド、マルベックなどを混ぜ合わせて骨格と果実味と香りのバランスを取ります。カベルネ・ソーヴィニヨンは骨格と長期熟成の力を、メルローは果実味とふくよかなボディを、カベルネ・フランは香りの華やかさをもたらします。ボルドーは川で左右に分かれ、左岸(メドックやグラーヴなど)は水はけのよい砂利質土壌でカベルネ・ソーヴィニヨン主体、右岸(サンテミリオンやポムロールなど)は保水性の高い粘土質土壌でメルロー主体という違いがあります。左岸はタンニン豊富で骨格のあるしっかりした味わい、右岸は渋みが穏やかで丸みのある味わいになります。

ブルゴーニュは、ボルドーと対照的に単一品種で造るのが基本です。赤はピノ・ノワール、白はシャルドネの一品種で仕上げます。ピノ・ノワールはタンニンが穏やかで、マイルドな酸味と高い香り、繊細さと凝縮感を併せ持ちます。シャルドネは穏やかな酸と長い余韻、コクがあり、フレッシュなものから樽由来のリッチなものまで幅があります。単一品種なのに味わいが多彩なのは、土壌や斜面の向き、クリマと呼ばれる区画の違いといった土地の個性が色濃く出るためで、ブルゴーニュはこのテロワールの表現を哲学としています。

ローヌは「北は単一品種、南はブレンド」と覚えると分かりやすい産地です。南北に約250キロメートルと長く、北ローヌの赤はシラー単一が基本、南ローヌの赤はグルナッシュを主体に複数品種をブレンドします。北ローヌのシラーは黒系果実、スミレ、黒胡椒のような香りで、しなやかな酸と緻密なタンニンが持ち味です。南ローヌのグルナッシュ主体の赤は果実味豊かでスパイスやドライハーブを伴い、地中海性気候のためアルコール度数が上がりやすくなります。

ロワールは白の銘醸地で、地区ごとに品種が変わります。西から東へ、ペイ・ナンテ地区はミュスカデ、アンジューからトゥーレーヌはシュナン・ブラン、トゥーレーヌからサントル(サンセールやプイィ・フュメ)はソーヴィニヨン・ブランが主役です。ミュスカデは梨のような香りのすっきり軽やかな辛口、ソーヴィニヨン・ブランはハーブや柑橘の爽やかな香りといきいきした酸、シュナン・ブランは香りと酸のバランスがよい万能タイプで、辛口から甘口、スパークリングまで造れます。

アルザスは、フランスの主要産地では珍しく、ラベルにブドウ品種名を書きます。全体の九割以上が白ワインで、単一品種で造られることが多い産地です。代表はリースリングとゲヴュルツトラミネール。リースリングは白い花、洋ナシ、柑橘の香りに品のある酸と鉱物的なミネラル、ゲヴュルツトラミネールはライチとバラの香りが際立つアロマティックな品種です。ドイツ国境沿いで、細長い瓶も特徴です。

イタリア

イタリアの二大銘醸地は、中部のトスカーナ州と北部のピエモンテ州です。トスカーナは土着品種サンジョヴェーゼ主体の赤で知られ、キャンティやブルネッロ・ディ・モンタルチーノが代表です。サンジョヴェーゼはイタリア国内の栽培面積が最も広い黒ブドウで、酸味とタンニンがしっかりあり、チェリーやプラムの香りが特徴です。これを主体に造るキャンティは、果実味豊かで酸が心地よく、食事に合わせやすいイタリアワインの顔とも言われます。

ピエモンテはネッビオーロから造るバローロやバルバレスコが看板です。ネッビオーロは淡いルビーからガーネットの色調で、すみれ、バラ、赤系果実の香りがピノ・ノワールを思わせますが、酸とタンニンが強く長期熟成向きです。これから造るバローロは「ワインの王」と呼ばれ、強いタンニン、高い酸、長期熟成能力を持ち、バラやタール、スパイスの香りをまといます。

スペイン

スペインを代表する赤ワイン産地がリオハです。生産の約四分の三が赤で、主要品種はテンプラニーリョ。名前は「早熟の」を意味するテンプラノに由来し、果皮の厚い黒ブドウです。伝統的にアメリカンオークの樽で長期熟成させ、複雑で深い味わいになります。

スペインには酒精強化ワインのシェリーと、スパークリングのカヴァもあります。シェリーはアンダルシア州ヘレス周辺で辛口白ワインにブランデーを添加して樽熟成させたもの、カヴァは多くがカタルーニャのペネデスでマカベオ(ビウラ)などを中心にブレンドして造られます。

制度の話は軽く

制度についても少しだけ触れておきます。フランスのAOCは1935年に制定され、旧世界の原産地呼称制度の原型になりました。イタリアはDOC・DOCG(DOCGが最上位で、政府の番号入り封印が付きます)、スペインはDOと最上位のDOCaという階層を持ちます。DOCaを名乗れるのはリオハとプリオラートのみと言われます。これらの制度で許可品種、収量、熟成などが規定され、品質を保証しています。細かい年号や件数は年々変わるので、ここでは「産地ごとに厳しいルールがある」という理解で十分です。

なお品種名をラベルに書くには、その品種を八割五分以上使うのが国際的な目安とされ、収穫年の表示も同じく八割五分以上が目安です。ブルゴーニュやアルザスのように品種名を前面に出す産地は、この制度と相性がよいと言えます。


03 ・ NEW WORLD

新世界の産地(米・チリ・豪・ニュージーランド・日本)

新世界の魅力は、品種名がラベルの主役になっていて「この品種はこの味」で選びやすいことです。加えて、総じてコストパフォーマンスがよいのも強みです。ただしカリフォルニアやニュージーランドのように高価格帯もあります。産地ごとの象徴品種を見ていきます。

アメリカ(カリフォルニア)

カリフォルニアと深く結びつく品種がジンファンデルです。19世紀のカリフォルニアワイン造りの主役で、ラズベリーのような赤い果実から黒コショウ、クローブ、リコリスまで幅広い味わいを持ちます。ナパの古樹からは、スパイスと黒コショウの香る濃厚でジャミーな赤ワインが生まれます。より軽く食事に合わせやすいスタイルもあります。

ナパ・ヴァレーの赤の王様はカベルネ・ソーヴィニヨンです。ナパの総生産量の約四割、作物価値の約五割五分を占めます。カシス、チェリー、プラムなど黒い果実の風味に、樽熟成由来のスパイス感が加わり、若いうちは濃密でパワフル、熟成でも優雅に育ちます。1976年の「パリの審判」でフランスの銘醸ワインを破り、カリフォルニアの名を世界に知らしめたスタイルが今も看板です。

チリ

チリを象徴する品種がカルメネールです。もともとボルドーの品種でしたが、チリでは長らくメルローと混同されており、1994年にフランスのブドウ品種学者ジャン・ブルシコによって別品種として「再発見」されたとされます。1998年には、チリ農業省もこれを正式に認めています。深い赤色で、赤い果実、スパイス、ベリーの香り。タンニンはカベルネより柔らかくミディアムボディで、よく熟すとチェリー様の果実味に、スモーキーやスパイシー、土っぽい要素、時にダークチョコやタバコ、革の風味も出ます。青ピーマンのような香りが出やすいのも特徴です。

チリは「価格に対する品質」が世界屈指と評されることが多く、特に赤(カベルネ、カルメネール)が強い産地です。安さの主な理由は土地や労働コストの安さと知名度の差であって、品質の低さではないとされます。地中海性気候と灌漑で、年による当たり外れが少なく安定して良質と言われます。

アルゼンチン

アルゼンチンの看板品種がマルベックです。世界のマルベック作付けの約四分の三がアルゼンチンにあると言われます。深い色調、凝縮した果実味、ベルベットのような口当たりが特徴で、ブラックベリー、プラム、ブラックチェリーなどの黒い果実に、スパイスやココア、土っぽさ、そして紫の花やスミレのフローラルな香りが加わります。タンニンは柔らかく丸いのが持ち味です。

アルゼンチンのマルベックは、メンドーサの標高の高さがカギです。畑はおよそ標高600から1,500メートルという高地にあります。強い紫外線で果皮が厚くなり、色やタンニン、風味成分が凝縮します。夜の冷え込みが酸を保つため、濃いのに意外とフレッシュ、という個性が生まれます。手頃な価格帯が厚いのも魅力です。

オーストラリア

オーストラリアを象徴する品種がシラーズです。国内で最も広く植えられており、バロッサ・ヴァレーが本拠地とされます。バロッサのシラーズはスミレから漆黒に近い濃い色調で、ダークチョコ、リコリス、熟したプラム、豊かなテクスチャーときめ細かなタンニンが特徴です。ユーカリやメントールのニュアンスも出ます。伝統的なスタイルは深く凝縮しタンニンも強く数十年の熟成に耐えますが、近年は早摘みで酸を残したミディアムボディの香り高いスタイルも増えています。手頃な普段飲みから高級コレクター品まで価格帯が広く、近年は値ごろな供給が増えています。

ニュージーランド

ニュージーランドを象徴する品種がソーヴィニヨン・ブランで、特にマールボロ産が世界的に有名です。グレープフルーツやライムの柑橘に、パッションフルーツやグアバのトロピカルフルーツ、さらに赤ピーマンやグーズベリーの香りが際立ちます。冷たい海風と大きな昼夜の寒暖差、水はけのよい土壌が、他所では再現しにくい強いアロマを生みます。ステンレスタンクで低温発酵させ、爽やかさとピュアな果実味を保ちます。

二番目に重要な品種がピノ・ノワールで、冷涼気候の赤としてセントラル・オタゴが名産地です。ラズベリー、チェリー、プラムなどの赤い果実に、繊細な酸由来のフレッシュさ、しなやかで直線的な骨格、きめ細かいタンニンを持ちます。ブルゴーニュより手が届きやすい冷涼系ピノとして注目されています。

日本

日本も新世界の一員です。代表品種は白の甲州と赤のマスカット・ベーリーAで、特に山梨県で盛んです。甲州は白ぶどうですが、果皮はやや紫がかった淡いピンクから赤紫色で厚めです。およそ千年以上とされる歴史を持つ、日本を代表する品種で、国際ブドウ・ワイン機構(OIV)に品種登録されています。味わいは軽やかで清涼感があり、フレッシュで上品な酸味、繊細でミネラル感が豊か。グレープフルーツに似た柑橘の香りや、和柑橘、梨といった「和」を感じさせるアロマもあります。現代の甲州は辛口が一般的で、和食との相性のよさが最大の売りです。マスカット・ベーリーAは、川上善兵衛が日本で交配育成した品種です。正確には、どちらも「日本原産」と言い切るより「日本を代表する品種」と表現されます。

日本の表示制度は正確に

日本のワインには覚えておきたい表示のルールがあります。2018年10月30日に施行された国税庁のルールで、「日本ワイン」は国産ブドウ100%を原料に国内で製造したものだけを指します。産地名、ブドウ品種名、収穫年を表示できるのは日本ワインだけです。輸入した濃縮果汁やバルクワインを使ったものは「国内製造ワイン(国産ワイン)」と呼ばれ、区別されます。この区別はラベルで確認できます。なお日本ワインで品種名や収穫年、産地名を表示するには、その要素が八割五分以上でなければなりません。

さらに日本にも地理的表示(GI)の制度があります。国税庁長官が産地からの申立てに基づき指定し、正しい産地であることと一定の品質を満たすことを保証する仕組みで、旧世界のAOCなどに相当します。GI「山梨」は2013年に、日本で初めてのワインの地理的表示として指定を受けました。GI山梨を名乗るには、使用ぶどうを甲州やマスカット・ベーリーAなど指定の品種に限る、一定の糖度以上のぶどうのみを使う、山梨県内で醸造・貯蔵・容器詰めする、「日本ワイン」の要件を満たす、補糖や補酸にも制限がある、といった厳格な基準をクリアし、官能審査や表示審査を通る必要があります。日本ワインの中でも、さらに上位の厳しい基準だと考えると分かりやすいでしょう。


04 ・ SIX BOTTLES

産地で飲み比べる6本

ここまでの知識を、実際の飲み比べで体験してみましょう。おすすめは同じ品種を旧世界と新世界で並べるやり方です。同じ品種でも産地が違うとどれだけ味が変わるか、舌で確かめられます。ここでは日本で買いやすいものを軸に、3組6本を紹介します。実際、サントリーのワインショップ「カーヴ・ド・ヴァン」でも、同じ品種を旧世界と新世界で並べる飲み比べセットが売られています。中身は時期で入れ替わりますが、こうした公式企画があるくらい、定番の楽しみ方です。

1組目・シャルドネ

同じシャルドネで、旧世界の酸・ミネラルと、新世界の果実味の違いが最も分かりやすく体験できる組み合わせです。予算に余裕があれば、新世界側に樽をしっかり効かせたカリフォルニアやチリのシャルドネを合わせると、バニラやナッツ、トーストの樽香とのコントラストがさらにはっきりします。

2組目・ソーヴィニヨン・ブラン

この香りの差は香気成分で説明できます。青ピーマンや青草のような香りはメトキシピラジン(冷涼な気候で強く出ます)、パッションフルーツのような香りはチオール類によるもので、ニュージーランド産はロワール産に比べこの成分が数倍高いとされます。予算を抑えたいときは、新世界側をコノスルなど低価格帯に替えても対比は成立します。

3組目・シラー(シラーズ)

シラーとシラーズは同じ品種です。オーストラリアでは表記を「シラーズ」に一本化しています。ラベルの綴りを見るだけで、旧世界か新世界かの見当がつくという実用的な小ネタになります。同じ品種でここまでスタイルが違うのか、と驚けるはずです。

もう一組、ピノ・ノワールで旧世界ブルゴーニュと新世界セントラル・オタゴ(ニュージーランド)を比べるのも魅力的ですが、ピノは価格が上がりやすいので、少し背伸びをしたい回の楽しみに取っておくのが正直なところです。また、日本の輸入ワイン市場では近年フランスとチリが一位、二位を分け合っており、この2国のワインは店頭で最も揃えやすいので、まずはフランスとチリの組み合わせから始めるのもおすすめです。


おわりに

ワインを産地で選べるようになると、売り場が一気に読み解きやすくなります。ラベルに地名が大きく書いてあれば旧世界、品種名が書いてあれば新世界です。冷涼な産地なら酸が高く軽やか、温暖な産地なら果実味が濃くパワフルになります。この二つの目安があれば、飲む前に味の見当をつけやすくなります。もちろん例外は多いので、あくまで最初の物差しとして使ってください。

気になった1本を飲んだら、ぜひ酒記に記録してみてください。産地と品種、感じた酸や果実味を書き添えておくと、自分がどんな味を好きなのかが少しずつ見えてきます。旧世界と新世界を飲み比べた日は、どちらが好みだったかもメモしておくと、次の1本を選ぶときの手がかりになります。


よくある質問(FAQ)

ラベルに地名しか書いていなくて、何のブドウか分かりません。どうすればいいですか。
それは旧世界のワインである可能性が高いです。旧世界では、産地名から品種が分かる前提で書かれています。たとえばシャブリはシャルドネ、プイィ・フュメはソーヴィニヨン・ブランです。有名な産地と品種の対応を少しずつ覚えていくと、地名だけで味の見当がつくようになります。分からないときは、お店の人に「これは何のブドウですか」と聞くのがいちばん早くて確実です。
旧世界と新世界、どちらが初心者向きですか。
選びやすさで言えば新世界です。品種名がラベルに大きく書かれていて「この品種はこの味」で選べますし、チリやアルゼンチン、オーストラリアは手頃な価格帯が厚いので気軽に試せます。ただし旧世界にも、料理に寄り添うエレガントなワインが多くあります。まずは新世界で品種の個性をつかみ、慣れてきたら同じ品種の旧世界と飲み比べると、産地の違いが体感できて面白いです。
同じカベルネ・ソーヴィニヨンなのに、値段も味もかなり違います。なぜですか。
主な理由は気候と造り方の違いです。温暖な産地では果実が完熟して果実味豊かなパワフルなスタイルに、冷涼な産地では酸が残って引き締まったスタイルになりやすいです。加えて、旧世界のボルドーは複数品種を混ぜるブレンドが伝統で複雑味が出やすく、チリなどの新世界は単一品種主体で果実味がまっすぐ出やすい、という違いもあります。値段は品質だけでなく、土地や労働のコスト、知名度でも変わります。
「シラー」と「シラーズ」は違うブドウですか。
同じブドウです。フランスなどでは「シラー」、オーストラリアでは「シラーズ」と呼びます。オーストラリアは表記をシラーズに一本化しています。ただし同じ品種でも、北ローヌのシラーは黒コショウのスパイシーさとエレガントさ、豪州のシラーズは濃厚な果実味とフルボディ、というように産地でスタイルが大きく変わります。綴りを見れば、旧世界か新世界かの見当がつく便利な目印です。
「日本ワイン」と「国産ワイン」は同じものですか。
違います。「日本ワイン」は国産ブドウを100%使い国内で製造したものだけを指す表示で、産地名や品種名、収穫年を書けるのは日本ワインだけです。一方、輸入した濃縮果汁やバルクワインを使ったものは「国内製造ワイン(国産ワイン)」と呼ばれ、区別されます。この違いはラベルで確認できます。さらに山梨などのGI(地理的表示)は、日本ワインの中でもより厳しい基準を満たしたものに与えられます。

主な参考・出典

  • 国税庁「地理的表示『山梨』生産基準」「果実酒等の製法品質表示基準」「国内製造ワインの表示ルール」(nta.go.jp)
  • 山梨県ワイン酒造組合「GI Yamanashi」(wine.or.jp)
  • 日本ワイナリー協会「表示基準・表示事項解説」(winery.or.jp)
  • エノテカ ワインの読み物(ボルドー、ブルゴーニュ、ローヌ、ロワール、トスカーナ、ネッビオーロ、シャルドネ、ピノ・ノワールほか/enoteca.co.jp)
  • アカデミー・デュ・ヴァン ブログ(ブルゴーニュ、ピエモンテ、ローヌ、アルザスほか/adv.gr.jp)
  • モトックス ワインコラム(トスカーナ、リオハ、スペイン、ソーヴィニヨン・ブランほか/mottox.co.jp)
  • THE CELLAR(ブルゴーニュ、アルザス、イタリアワイン、テンプラニーリョ/cavederelax.com)
  • Napa Valley Vintners「Napa Valley Grape Varieties」(napavintners.com)
  • New Zealand Wine「Sauvignon Blanc」「Pinot Noir」(nzwine.com)
  • Barossa/Wine Australia「Shiraz」(barossa.com/wineaustralia.com)
  • Doña Paula「Malbec, Argentina's Signature Variety」/Wine Folly「Mastering Mendoza Malbec」「Carménère」(winefolly.com)
  • キリン「ワインの基礎知識 甲州」/山梨県公式観光ネット(kirin.co.jp/yamanashi-kankou.jp)
  • サントリー カーヴ・ド・ヴァン「旧世界vs新世界」飲み比べ企画(cave-online.suntory-service.co.jp)
  • 日本経済新聞「『シラー』と『シラーズ』 違いを知ってワイン味わう」(nikkei.com)
  • Wine with Seth(winewithseth.com)/Wine Folly(winefolly.com)/Decanter(decanter.com)
  • サッポロビール ワインの時間(wine.sapporobeer.jp)/酒屋やわいん(sake-ya.jp)/COCOSブログ(cocos.co.jp)
  • キリンホールディングス 輸入ワイン統計(PR TIMES)/nippon.com(輸入ワイン統計)
  • Wikipedia「Terroir」「Carménère」「California wine」ほか

本記事の味わいや制度の説明は、大まかな傾向と公開情報に基づく一般的な目安です。アルコール度数の数値や産地の傾向には例外が多く、GI制度や表示ルールの最新内容、指定地域は変わることがあります。正確な情報は国税庁など公的機関の最新資料をご確認ください。銘柄名は実在の商品を参考として挙げたもので、在庫や価格は時期により変わります。お酒は20歳になってから、適量を楽しみましょう。

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