WINE ・ ペアリング
ワインと料理のペアリング入門
「合う」の仕組みを知れば、選ぶのが楽しくなる
WINE / 約12分で読めます / 2026
ワイン売り場でずらりと並んだボトルを前に、「今夜のごはんにはどれを買えばいいのか」と迷った経験は、きっと誰にでもあると思います。ソムリエの本を開くと、産地や品種の名前がたくさん出てきて、なんだか身構えてしまいますよね。でも、実はワインと料理の相性には、覚えておくと一気に選びやすくなる、いくつかのシンプルな考え方があります。
この記事では、その考え方を「引き出し」のように整理して紹介します。魚に白、肉に赤という昔ながらの言い伝えが、なぜそう言われてきたのか。逆に、その通りにしなくてもいい場面はどんなときか。醤油や出汁を使う家庭の和食には何を合わせるといいのか。そして、スーパーで千円台で買える実在のワインまで、家の食卓でそのまま試せる形でお伝えします。
本記事は確認できた事実を土台に、専門的な理論はできるだけ噛み砕いて書きました。ワインと料理の相性は、最後は「自分が美味しいと感じるかどうか」がいちばん大切です。ここで紹介するのは絶対のルールではなく、「大きく外さないための目安」として、気楽に使ってみてください。
01 ・ PRINCIPLES
ペアリングの基本原則
まずは、料理とワインを合わせるときの「土台になる考え方」を4つ紹介します。この4つを頭の引き出しに入れておくだけで、選ぶときの迷いがぐっと減ります。順番に、いちばん覚えやすいものから見ていきましょう。
① 色を合わせる(魚に白・肉に赤)
初心者にとっていちばんわかりやすいのが、料理とワインの「色」をなんとなくそろえる方法です。牛肉は色が濃いので赤ワイン、鶏肉や豚肉、白身魚は色が薄いので白ワイン、というイメージです。ビーフシチューには赤、クリームシチューには白、という具合に考えると、まず大きく外しません。
ここで一歩踏み込むコツがあります。それは、食材そのものの色よりも、ソースや味付けの色を優先することです。たとえば同じ鶏肉でも、あっさりした塩焼きなら白が合いますが、醤油ベースの照り焼きのタレで香ばしく焼いたものなら、タレの色と風味が赤ワインの渋みと通じ合って、赤のほうがしっくりくることがあります。「料理全体が最終的にどんな色に仕上がっているか」で考えると、応用が利きます。
ただし、この「魚に白・肉に赤」は絶対のルールではありません。むしろ専門家の間では、今は「昔ながらの目安」くらいに受け止められています。実際にはたくさんの例外があります。マグロやサーモンのような脂の乗った魚は、軽い白だと風味に負けてしまうので、コクのある白やロゼ、軽い赤のほうが合うこともあります。逆に、あっさりした鶏のむね肉に力の強い赤を合わせると、ワインが料理を押しつぶしてしまいます。色はあくまで最初の入り口として使ってください。
② 重さ(ボディ)を合わせる
色より少し応用が利くのが、料理とワインの「重さ」をそろえるという考え方です。ワインには軽やかなものからずっしり濃厚なものまで幅があり、この重さのことをボディと呼びます。あっさりした料理には軽いワインを、こってりした料理には重いワインを合わせるのが基本です。
なぜこれが大事かというと、どちらか一方が強すぎると、もう一方が「縮んで」しまうからです。たとえば、カベルネ・ソーヴィニヨンのような重い赤ワインを、軽いキッシュのような料理に合わせると、ワインが料理を押しつぶしてしまいます。反対に、ピノ・グリージョのような軽い白ワインを、じっくり煮込んだ肉料理に合わせると、今度はワインのほうが料理に負けて、水っぽく感じられてしまいます。お互いが同じくらいの力で向き合えると、引き立て合えるわけです。
「魚に白・肉に赤」という言い伝えの本当の根っこも、実はこの重さの話だと言われています。肉は一般に重くて色が濃いので白より重めの赤が、魚は軽くて色が淡いので白が合うとされた、というのが由来です。色というより、重さの相性を、色で言い換えていたと考えるとわかりやすいと思います。
③ 産地を合わせる
3つ目は「同じ土地で育ったものは、同じ食卓で合う」という考え方です。世界が今のように何でも輸入できるようになる前のヨーロッパでは、人々は地元で採れたもので料理をし、地元のワインを飲んでいました。その土地の料理とワインは、同じ土壌・日照・気候(テロワールと呼びます)から生まれたので、自然に調和するように育ってきた、というわけです。
定番の例としては、ブルゴーニュの牛肉の赤ワイン煮込みには地元ブルゴーニュのワイン、トスカーナのトマトを使った料理には地元のサンジョヴェーゼ、牡蠣にはミュスカデ、といった組み合わせがよく挙げられます。ただしこれらはあくまで「よく知られた好例」で、必ず合うと断言できるものではありません。それでも、「迷ったら同じ産地同士でそろえる」というのは、手堅い目安になります。
④ 似せるか、対比させるか
最後は少し上級の考え方ですが、知っておくと格段に選びやすくなります。合わせ方には大きく2つの方向があります。似た風味を重ねる方法(補完・共鳴型)と、反対の風味で引き立てる方法(対比型)です。
似せる方向の例としては、土っぽい香りのブルゴーニュのピノ・ノワールに、きのこ料理を合わせる組み合わせがあります。樽の効いた香ばしいシャルドネに、こんがり焼いたローストチキンを合わせると、ワインのバニラやトーストのような香りが、鶏の香ばしい皮と響き合います。似たもの同士でハーモニーを作るイメージです。
対比させる方向の例としては、キリッと酸のあるソーヴィニヨン・ブランに、クリームソースの魚料理を合わせる組み合わせがあります。ワインの酸味が、クリームの重たさをすっと断ち切ってくれるのです。この「切る」感覚を生むのが、ワインの持つ3つの要素です。酸味は口の中をさっぱりさせて、脂っこい料理や濃厚な料理を切ります。牡蠣にレモンを絞るイメージです。赤ワインの渋み(タンニン)はタンパク質と結びつくので、赤身肉やハードチーズのような脂とタンパク質の多い料理と合わせると、渋みがやわらかく感じられると言われます。甘みは、唐辛子などの辛さをやわらげ、料理のほのかな甘みを引き立ててくれます。
ここまでの4つの引き出しを、最後にもう一度まとめておきます。色や重さ、産地をそろえること、そして料理と似せるか対比させるかを考えること。この4つを頭に置いておけば、売り場での選択がぐっと楽になります。そして大前提として、これらはルールではなく目安です。いちばん大事なのは、自分が好きで楽しめるワインを選ぶことです。料理とワインがお互いを尊重し合えれば、それで十分成功なのです。
02 ・ BY TYPE
タイプ別に合う料理
次は、ワインのタイプごとに「どんな料理と合いやすいか」を具体的に見ていきます。ここで出てくるソーヴィニヨン・ブランやシャルドネといった名前は、あくまで各タイプの代表例です。同じタイプでも産地や造り手で味わいには幅があるので、「こういうタイプ」というくらいの気持ちで読んでください。
すっきり辛口の白
ソーヴィニヨン・ブランに代表される、酸のはっきりした辛口の白です。この高い酸味が、まるでレモンを一絞りしたように、繊細な魚や貝の旨みを引き立ててくれます。牡蠣やあさりなどの貝類では、酸味が磯の塩気をきれいに断ち切りつつ、新鮮さを引き立てます。サバのような脂の乗った魚の脂を切るのも得意です。帆立のソテー、ムール貝の白ワイン蒸し、生牡蠣といった料理が定番ですが、日本の食卓なら刺身やカルパッチョ、酢の物、サラダ系の前菜に置き換えて考えると使いやすいです。
コクのある樽熟成の白
オーク樽で熟成させたシャルドネに代表される、バターやバニラ、トーストのような風味を持つふくよかな白です。バターやクリームソースを使った料理と相性が良く、たとえばクリーム系のチキンや、マッシュルームのクリーム煮などと合わせると、ワインのなめらかな質感がソースの濃厚さと調和します。似たもの同士で響き合う組み合わせです。同時に、リンゴや洋梨、レモンのような酸味が残っていると、ソースの重さを切ってくれます。ですから、樽が効きすぎたものより、酸味の残る中くらいの樽熟成タイプのほうが、バランスよく合わせやすいでしょう。
軽い赤
ピノ・ノワールに代表される、軽やかで生き生きとした酸を持つ赤です。鶏肉全般(ローストでも煮込みでも)や豚肉とよく合います。この軽い赤が特に力を発揮するのがトマト料理です。トマトは酸が強いので、それに負けない酸を持つワインが必要になります。酸の弱いワインだと料理に負けて、味がぼやけてしまうのです。トマトソースのパスタやラザニア、ピザなどと合わせると、ワインの酸とトマトの酸が調和し、料理の甘酸っぱさがワインのプラムやベリーの香りを引き出してくれます。
重い赤
カベルネ・ソーヴィニヨンに代表される、渋み(タンニン)のしっかりしたフルボディの赤です。赤身肉や煮込み料理と好相性で、これには理由があります。タンニンはタンパク質や脂肪と強く結びつく性質があり、赤身肉はそのタンパク質と脂肪が豊富です。ステーキと合わせると、ワインのタンニンが肉のタンパク質や脂肪と結びついて、ワインがよりやわらかく、なめらかに感じられると言われます。ステーキ、ローストビーフ、ラム、鴨、鹿肉のシチューといった「肉々しい」料理が得意分野です。焼き目の香ばしいほろ苦さが、タンニンのほろ苦さと呼応します。じっくり煮込んだ牛ほほ肉やショートリブの深い旨みには、熟成した赤の発達した風味がよく合います。
ロゼ
ロゼは赤と白のちょうど中間に位置する、万能タイプのワインです。黒ブドウから造りますが、赤よりも渋みと風味が軽く、白のように冷やして飲みます。味の強さがちょうど真ん中あたりにあるので、繊細な料理を押しつぶすこともなく、しっかりした味の料理にも対応できます。地中海料理から唐揚げ、シーフード、ローストチキン、豚肉、少し辛い料理や甘みのある料理まで、幅広くこなします。「白にするか赤にするか迷う」という料理が食卓に混ざっているとき、一本で全部に対応してくれる頼もしい存在です。
スパークリング
きめ細かい泡と高い酸を持つスパークリングは、食前酒や揚げ物、塩気のあるおつまみに最適です。泡と酸が油や濃厚さを効率よく断ち切ってくれるので、イカフライやフライドポテト、唐揚げなどの揚げ物と抜群に合います。塩気がワインの果実味をより豊かに感じさせ、ひと口ごとに泡が口の中を洗い流してくれます。食前酒として優れているのは、酸が味覚を刺激して食欲を「開いて」くれるからです。この用途には、甘くない辛口(ブリュット)が最適です。甘さや重さ、高いアルコールは、かえって食欲を鈍らせてしまいます。
甘口
デザートやチーズと合わせる甘口ワインには、大事な鉄則が1つあります。それはワインがデザートよりも甘いことです。デザートのほうが甘いと、その甘さがワインを覆い隠してしまい、ワインが酸っぱく、平板に感じられてしまいます。ですから、ソーテルヌのような甘口ワインには、チーズケーキやレモンタルトのような、甘すぎないデザートが好相性です。極端に甘いデザートは避けるのが無難です。また、甘口ワインと青カビチーズ(ブルーチーズ)の組み合わせは「ペアリングの至高」とも言われ、ワインの甘みがチーズの塩気や刺激と対比を作ります。良い甘口ワインには、くどさを防ぐ切れの良い酸が欠かせません。
甘口の中でも、やや甘口で香り豊かなタイプ(オフドライのリースリングやゲヴュルツトラミネール、モスカートなど)は、タイ料理やインド料理のような辛い料理とも好相性です。ワインの甘みが唐辛子の辛さをやわらげ、酸がくどさを防いでくれます。フルーツのタルトのような軽いフルーツ系デザートにもよく合います。ただし、チョコレートの濃厚なケーキのような、とても甘いデザートには負けてしまうので注意してください。
03 ・ JAPANESE TABLE
和食・家庭料理とワイン
ここまでは主に西洋料理を前提にした話でした。でも、私たちが日々食べるのは、醤油や味噌、出汁を使った和食や家庭料理です。ここには日本ならではの合わせ方のコツがあります。むしろ、和食とワインは相性が悪いどころか、ポイントさえ押さえればとても楽しい組み合わせになります。
迷ったら「泡」と「甲州」
和食にいちばん万能なのは、瓶内二次発酵で造られたスパークリングワインです。この造り方に特有の、アミノ酸由来の旨みが、和食の出汁と同調してくれるからです。家庭料理から会席まで幅広く対応でき、天ぷらには上質な泡が衣のサクサク感に合い、上品な酸が油をすっきり流してくれます。「何を合わせるか迷ったらまず泡」と覚えておくと、失敗が少なくて済みます。
もう一つ、和食との相性で覚えておきたいのが甲州という日本固有の白ブドウ品種です。主に山梨県で造られ、すっきりした酸とほのかなほろ苦さ、柑橘やミネラルを感じる味わいが特徴です。刺身や酢の物、出汁を使った料理、茶碗蒸しなどに合わせやすく、わさびを利かせた刺身にも寄り添ってくれます。山梨のミネラル感が、昆布や鰹節の出汁の旨みと重なると、旨みがふくらむとも言われています。「和食に迷ったらまず甲州」も、初心者にとって安心の選択です。
刺身が生臭くなる理由と、その回避策
「赤ワインと魚を一緒に食べると生臭くなる」という話を聞いたことがあるかもしれません。これは長らく経験則として語られてきましたが、実は日本の研究で科学的に解明されています。メルシャン(現在のキリン)ワイン技術研究所の田村隆幸主任研究員らの研究で、ワインに含まれる鉄分(二価鉄イオン)が原因だとわかったのです。この鉄イオンが魚の脂質の酸化を促し、不快な生臭みの成分を発生させます。この成果は2009年にアメリカ化学会の学術誌にも発表されました。
つまり、生臭みの犯人は鉄分です。赤ワインは白ワインよりも鉄分が多い傾向があるので、生魚と組むと生臭くなりやすい、というわけです。逆に白ワインに含まれる酸味は、生臭さを抑える働きをします。これが「魚には白ワイン」が定着した、実用上の理由の一つです。
家庭でできる回避策は2つあります。1つは鉄分の少ないワインを選ぶこと。同じ研究で、甲州のワインは鉄分が少ない傾向にあると示されています(ただし銘柄による差もあるので、あくまで傾向としてです)。もう1つは料理にオリーブオイルやバターなどの油脂を加えること。油脂に生臭みを抑える効果が確認されています。刺身にオリーブオイルを一滴たらす、というのは手軽で効果的な一手です。
醤油・味噌にはどう合わせるか
和食の味の決め手になるのが、醤油や味噌などの発酵調味料です。ゴ・エ・ミヨのベストソムリエ賞を受賞した松岡正浩ソムリエの解説によると、合わせ方には次のような目安があります。
- 醤油ベースの料理には、樽熟成の白(樽シャルドネや熟成リースリング)が合います。樽由来の香ばしいトースト香が、醤油の香ばしさとよくなじみます。照り焼きやタレ焼きのように醤油の香ばしさが立つ料理は、冷涼な産地の軽めで酸のあるピノ・ノワール(赤)に寄せてもよく合います。
- 赤味噌の料理には、フルボディの濃い赤(カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、シラーなど)が合います。樽の香ばしさが赤味噌のコクや複雑味に同調し、塩味を包み込みます。
- 白味噌の料理には、樽シャルドネのような果実味のある白が合います。
味噌の場合は、調味料の色や濃さにワインの濃さを合わせる、と考えるとわかりやすいです。
避けたい組み合わせ
逆に、和食で気をつけたい組み合わせもあります。特に日本人は出汁文化に親しんでいて旨みに敏感なので、ここは知っておくと役に立ちます。
- 繊細な白身魚に、重い赤ワイン。赤の強い味わいが、鯛やヒラメのような繊細な風味を覆い隠して台無しにしてしまいます。淡白な白身魚には、軽やかで繊細な白を合わせてください。
- 出汁など旨みの強い料理に、若くて渋い赤ワイン。旨みの成分がワインの渋みや苦味を強調してしまい、赤が「硬く、苦く、金属的」に感じられやすくなると言われます。醤油、熟成チーズ、きのこ、干物などの旨みが強い料理には、酸の明るいワインや、渋みの穏やかなワイン、または熟成で渋みがやわらいだ古めのワインを選ぶと安心です。
- 甘口や香りの個性が強すぎる白を、塩味の和食に。塩味と甘みが反発したり、塩味が強調されすぎたりして失敗しやすくなります。天ぷらや寄せ鍋のように出汁の効いた料理には、辛口でバランスの良い白が安定します。
和食にワインを合わせるとき、家庭向けの安全策をまとめると、「まず辛口でバランスの良い白か、瓶内二次発酵の泡」から始めると失敗が少ないです。そこに醤油や味噌の香ばしさが加わったら赤に寄せる、と覚えておくと応用が利きます。
04 ・ AT HOME
家庭で実践するコツ
理屈がわかったところで、いよいよ家の食卓で実践するための、具体的で実用的なコツをお伝えします。むずかしく考えず、ここに書いたことだけ押さえておけば十分です。
迷ったらの一手
選ぶのに悩んで動けなくなったら、答えはシンプルです。スパークリングかロゼを選んでください。
スパークリングは、泡が口の中をさっぱりさせてくれるので揚げ物とも相性が良く、酸味はレモンのような酸味のある食材ともなじみます。基本的にどんな料理とも合わせやすく、食前・食中・食後のどのシーンでも使える万能選手です。ロゼは赤と白のちょうど中間で、バランス型の味わいです。幅広い料理に合わせやすく、初心者の「最初の一本」としてよく勧められます。この2つのどちらかを選んでおけば、大きく失敗することはまずありません。
温度でこんなに変わる
意外と見落とされがちなのが、飲むときの温度です。同じワインでも、温度が違うだけで印象がまるで変わります。ここで気をつけたいのが「赤ワインは常温で」という言い伝えです。この「常温」は、本来ヨーロッパの涼しい室温(15〜18℃くらい)を指しています。日本の室温、特に夏はこれより高すぎることが多いので、そのまま出すとぼやけた味になりがちです。赤も軽く冷やすと、味が締まってぐっと美味しくなります。
目安は次の通りです。数値はソースによって多少幅があるので、「これくらい」という方向性としてとらえてください。
- フルボディの赤:16〜18℃前後(日本の室温より少し低いくらい)
- ミディアムボディの赤:13〜16℃前後
- ライトボディの赤:10〜12℃前後(軽く冷やす)
- 辛口の白・ロゼ:7〜14℃前後(しっかり冷やす)
- 甘口の白・スパークリング:5〜8℃前後(よく冷やす。甘いほど、泡があるほど冷やすと爽やかに感じます)
冷やす時間の目安は、冷蔵庫で15分におよそ1℃下がるとされています。赤なら1〜2時間、白なら2〜3時間ほど冷蔵庫に入れておくとちょうどよくなります。急ぐときは、氷水にボトルを浸すと早く冷えます。
飲む順番のセオリー
何本か開けるときは、軽いものから重いものへという順番が基本です。人の味覚は、強い味に慣れると軽い味を感じにくくなるからです。前菜にスパークリング、魚料理に白、肉料理に赤、そして最後にデザートと甘口、という西洋料理のコースの流れが、そのままお手本になっています。甘口を先に飲むと、あとの辛口ワインが痩せてギスギスして感じられるので、甘口は基本的に最後です。ただし、スパークリングだけは例外で、炭酸と香りが食べ物のクセを包んでくれるので、食前・食中・食後のいつ飲んでも大丈夫です。
価格帯の話
「美味しいワインは高い」と思い込んでいませんか。実は、スーパーの1,000〜1,500円台でも十分に美味しいワインが買えます。大規模なワイナリーが機械化して大量に造ることで、低価格でも品質を保てるようになったからです。たとえばチリのコノスルは1,000円前後で本格的な味わいですし、スペインのワインも1,000円以下で果実味豊かなものがあります。業務スーパーやイオン、西友はコスパ重視の品ぞろえ、成城石井やカルディはバイヤーが厳選した良品が1,000〜1,500円台でそろっています。
コンビニやスーパーで買える缶入りのスパークリングも、少量で冷えた状態で買えるので、開けてすぐ楽しめる手軽な入口として実用的です。もう一段上の味を試してみたくなったら、少し予算を上げてみるのもいいですが、それはあくまで好みと予算次第です。まずは手の届く価格帯で、いろいろ飲み比べて楽しむところから始めてみてください。
05 ・ SEVEN BOTTLES
料理に合わせたい7本
最後に、料理のタイプ別に「これを買えば間違いない」という、日本で手に入りやすい実在のワインを7本紹介します。いずれも長年の定番で、スーパーや酒屋、ネット通販などで入手しやすいものを選びました。価格は変動するので参考程度に見てください。まずはこの中から、その日の料理に合いそうな一本を選んでみてください。
- フレシネ コルドン ネグロ ブリュット(スパークリング)。スペインを代表する辛口のカヴァで、シャンパンと同じ瓶内二次発酵で造られています。黒い瓶がトレードマークで、柑橘の香りとキリッとした酸、細かい泡が特徴です。揚げ物や前菜など幅広い料理に合い、乾杯や食前酒の定番です。
- シャブリ(すっきり辛口の白)。フランス・ブルゴーニュ北部のシャルドネ100%の白で、「すっきり白の代名詞」とも言える存在です。豊かな酸とミネラル感が身上で、牡蠣や白身魚、天ぷらなどレモンを効かせた魚介や揚げ物とよく合います。初心者向けの造り手としては、ウィリアム・フェーブルがよく挙げられます。
- モンテス アルファ シャルドネ(コクのある樽熟成の白)。チリの名門モンテスが造る、フレンチオーク樽で熟成させた濃厚な白です。トロピカルフルーツや桃、バターのようなリッチな味わいで、クリームソースやグラタン、鶏や豚のソテーなど、バターを使った料理によく合う「コクのある白」の代表格です。
- ジョルジュ デュブッフ ボジョレー・ヴィラージュ(軽い赤)。ガメイ100%の軽やかな赤で、赤い果実や花の香り、控えめな渋みが特徴です。冷やしても飲みやすく、日常料理や和食、鶏や豚のさっぱりした料理、ハムやソーセージなどに合わせやすい「軽い赤」の定番です。
- コノスル ビシクレタ カベルネ・ソーヴィニヨン(重い赤)。チリ大手コノスルの手頃なシリーズで、カシスやチェリーの香りにスパイスが加わった、しっかりした骨格のフルボディです。ステーキや焼肉、ビーフシチュー、ボロネーゼなど脂の乗った肉料理と好相性で、1,000円前後で買える入手性の高い「重い赤」です。
- サンタ・ヘレナ アルパカ ロゼ(ロゼ)。チリの辛口ロゼで、ラズベリーや柑橘の爽やかな果実味が特徴です。スクリューキャップで開けやすく、700〜1,000円前後と手頃です。生ハムやサーモン、中華やエスニックなど、一本で肉にも魚にも対応できる万能さが魅力です。
- サンテロ 天使のアスティ(甘口)。イタリア・ピエモンテのモスカート・ビアンコ100%の、甘口で微発泡のワインです。アルコールは低めで、マスカット由来の華やかで甘い香りが楽しめます。焼き菓子やフルーツ、チーズなどのデザートや、スパイシーなエスニック料理に甘みのコントラストで合う、お酒が弱い人にも優しい入門甘口です。
おわりに
ここまで、ワインと料理を合わせる考え方を一通り紹介してきました。振り返ると、覚えることは実はそんなに多くありません。4つの引き出し(色・重さ・産地、そして似せるか対比させるか)と、「迷ったら泡かロゼ」「赤も軽く冷やす」「軽いものから重いものへ」という実践のコツを押さえておけば、もう売り場で立ち尽くすことはなくなるはずです。
そして何より大切なのは、これらはルールではなく目安だということです。今夜の食卓で一本開けてみて、理屈通りにいかなくても、自分が美味しいと思えばそれで十分です。
気に入った組み合わせが見つかったら、ぜひ酒記に記録しておいてください。「この料理にこのワインが合った」という小さなメモが積み重なると、あなただけのペアリングの引き出しになっていきます。記録が増えるほど、次の一本を選ぶときの参考になります。
よくある質問(FAQ)
結局、魚に白・肉に赤は守ったほうがいいですか。
最初の入り口としては便利な目安ですが、絶対のルールではありません。今の専門家の間では「昔ながらの目安」くらいの受け止めです。脂の乗ったマグロやサーモンには軽い赤やロゼが合いますし、醤油の照り焼きには赤が合うこともあります。色より、料理の重さや味付けの濃さにワインの強さを合わせるほうが応用が利きます。
刺身にワインを合わせたら生臭くなってしまいました。どうすればいいですか。
生臭みの原因は、ワインに含まれる鉄分だと日本の研究で解明されています。赤ワインは鉄分が多い傾向があるので、生魚には白を選んでください。回避策としては、鉄分の少ない傾向のある甲州を選ぶこと、そして刺身にオリーブオイルを一滴たらすことが効果的です。油脂に生臭みを抑える働きがあります。
スーパーの安いワインでも大丈夫ですか。
十分に大丈夫です。1,000〜1,500円台でも美味しいワインはたくさんあります。大きなワイナリーが大量に造ることで、低価格でも品質を保てるようになったからです。まずは手の届く価格帯でいろいろ飲み比べて、好みを見つけるところから始めるのがおすすめです。もう一段上を試したくなったら、少し予算を上げてみてもいいですが、それは好み次第です。
赤ワインは常温でいいと聞きましたが、本当ですか。
「常温」という言葉には注意が必要です。ここでの常温はヨーロッパの涼しい室温(15〜18℃くらい)を指していて、日本の室温、特に夏はこれより高すぎることが多いです。赤も軽く冷やすと味が締まって美味しくなります。フルボディなら16〜18℃、軽い赤なら10〜12℃くらいが目安です。冷蔵庫なら1〜2時間ほど(急ぐときは氷水で)冷やすと、ちょうどよくなります。
何を買えばいいか、どうしても決められないときは。
スパークリングかロゼを選んでください。スパークリングは泡と酸がどんな料理ともなじみ、食前から食後までいつでも使える万能選手です。ロゼは赤と白の中間で、肉にも魚にも一本で対応できます。この2つのどちらかを選んでおけば、大きく失敗することはまずありません。
主な参考・出典
- Wikipedia「Wine and food pairing」(en.wikipedia.org)
- Jean Leon「Myths: White wine with fish, red wine with meat」(jeanleon.com)
- ScienceDaily「Scientific Basis The Golden Rule Of Pairing Wines And Foods」(2009年、原典は学術誌 Journal of Agricultural and Food Chemistry・田村隆幸ら)
- キリン研究開発「世界が注目!魚介とワインの組み合わせで発生する生臭いにおいのメカニズムを解明」(rd.kirinholdings.com)
- 日本経済新聞「魚介の臭み感じぬワイン キリンなど原因の鉄分除去」(nikkei.com)
- キリン ワインアカデミー「甲州」「マリアージュの法則」(kirin.co.jp)
- WA・TO・BI 和食の扉「料理とワインの色を合わせる」「調味料とワイン、マリアージュの基礎」(松岡正浩ソムリエ監修・watobi.jp)
- WSJ Wine「Pinot Noir / Rose Food Pairing Guide」(wsjwine.com)
- Jordan Winery「Wine and Steak Pairing Tips」(jordanwinery.com)
- Drink & Pair「Oaked Chardonnay / Sauternes Food Pairings」(drinkandpair.com)
- Alcohol Professor「Sparkling Wine and Fried Food Pairings」(alcoholprofessor.com)
- Decanter「The 10 rules of food and wine pairing by Karen MacNeil」(decanter.com)
- Wine Folly「Food and Wine Pairing Basics」(winefolly.com)
- サッポロビール「ワインの適温」(sapporobeer.jp)
- エノテカ ワインの読み物「飲む順番」ほか(enoteca.co.jp)
- COCOS 趣味のワイン「1,500円以下コスパワイン」(cocos.co.jp)
- 各銘柄の実在・入手性:サントリー、モトックス、エノテカ、カクヤス、Amazon.co.jp、AEON de WINE、コノスルラヴァーズ 各商品ページ
本記事は執筆時点で確認できた情報にもとづく一般的な目安です。ワインと料理の相性は個人の好みや体調によって感じ方が異なります。銘柄の価格・入手性は変動する場合があります。お酒は20歳になってから、適量を楽しみましょう。