HAPPOSHU ・ 新ジャンル
新ジャンル(第3のビール)とは何か
ビール・発泡酒との違いと、選び方
HAPPOSHU / 約11分で読めます / 2026
スーパーやコンビニのビール売り場を思い出してみてください。「ビール」の隣に「発泡酒」、そしてもうひとつ「新ジャンル」や「第3のビール」と書かれた缶が並んでいます。見た目も、注いだときの泡も、飲んだ感じもよく似ているのに、名前も値段も少しずつ違います。この3つを分けているものは、いったい何なのでしょうか。
じつは、これらを分けているのは味そのものよりも、原料の決まりと、酒税(お酒にかかる税金)です。なかでも新ジャンルは、ビールにかかる高い税金を避けるために生まれた、いちばん手ごろな仲間でした。麦芽をあえて使わなかったり、別のお酒を混ぜたりして、ビールでも発泡酒でもない区分に置くことで、安く売れるようにしていたのです。
本記事は、確認できた事実を土台に、新ジャンルとは何か、ビールや発泡酒とどう違うのか、そして2026年に大きく変わる酒税のしくみまでを、売り場で選ぶ人の目線でやさしくまとめました。最後には、飲み比べたい実在の8本もそろえています。読み終わるころには、あの缶の並びがすっきり見えてくるはずです。
01 ・ WHAT
新ジャンルとは、何もの
まず言葉の整理からです。「新ジャンル」はメーカー各社が使っている呼び名で、「第3のビール」は新聞社や放送局などのマスメディア、広告代理店が広めた通称とされています。どちらも酒税法に出てくる正式な区分の名前ではありません。ビールでも発泡酒でもない、当時より税金の安かった区分から生まれた商品群を、まとめてこう呼んでいる、と考えてください。
この新ジャンルは、かつて大きく2つのタイプに分かれていました。造り方がまったく違う2系統があり、それぞれ酒税法のうえでの区分も別だったのです。
ひとつめが麦芽ゼロ型です。麦芽をまったく使わず、大豆やえんどう豆、とうもろこし、糖類などを発酵させて造るタイプで、酒税法のうえでは「その他の醸造酒(発泡性)」に分類されていました。たとえばキリン「のどごし〈生〉」は大豆たんぱくを使い、サッポロ「ドラフトワン」はエンドウたんぱくを使っています。世界で初めての新ジャンルは、このドラフトワンだと言われています。
ふたつめがスピリッツ添加型です。麦芽比率の低い発泡酒に、大麦や小麦などの麦由来のスピリッツ(蒸留酒)や焼酎を加えて造るタイプで、酒税法のうえでは「リキュール(発泡性)」に分類されていました。キリン「本麒麟」は大麦スピリッツ、サントリー「金麦」は小麦スピリッツ、アサヒ「クリアアサヒ」は大麦スピリッツを加えています。後から出てきた新ジャンルは、この方式が主流になっていきました。
なぜ、わざわざこんな造り方をするのでしょうか。理由は酒税を下げるためです。酒税法で「ビール」や「発泡酒」に当てはまると税率が高くなります。そこで、原料を麦や麦芽以外の穀物(おもに豆類)にする、あるいは発泡酒に別のお酒を混ぜることで、ビールにも発泡酒にも当てはまらない区分に置いて、税金を抑える狙いがありました。前者が「その他の醸造酒(発泡性)」、後者が「リキュール(発泡性)」というわけです。どちらも「その他の発泡性酒類」という大きなくくりの一種でした。
ここで大切なのが時期の話です。いま説明した2タイプというのは、じつは2023年(令和5年)9月までの枠組みです。2023年10月1日の酒税法改正で、この2タイプはどちらも品目が「発泡酒」に統合されました。つまり法律のうえでは、新ジャンルという独立した区分は事実上なくなっています。いまの缶の多くには「発泡酒②」と表示されていて、この末尾の「②」が、第3のビール相当の低い税率区分を示す記号です。かつては2タイプに分かれていた、いまは発泡酒に一本化された、と押さえておくと混乱しません。
02 ・ TAX
酒税と、2026年の一本化
Beer Tax
ビール系3分類と酒税(350ml換算)
| ビール | 発泡酒 | 新ジャンル |
| 酒税(現在) | 63.35円 | 46.99円 (麦芽25%未満) | 46.99円 |
| 2026年10月〜 | 54.25円 | 54.25円 | 54.25円 |
| 麦芽の使い方 | 主体(多い) | 25%未満など | 使わない、または発泡酒+スピリッツ |
| 酒税法の区分 | ビール | 発泡酒 | その他の醸造酒・リキュール |
2026年10月に3分類の酒税は54.25円へ一本化。新ジャンルの「安さ」の理由が消えていきます。
ビール系の飲み物が「ビール」「発泡酒」「新ジャンル」の3つに分かれているのは、もともと味の違いではなく酒税の差から生まれた区分です。ビールにかかる高い税を避けるため、1990年代に麦芽を減らした発泡酒が、2000年代に麦芽を使わない、または別のお酒を加えた新ジャンルが登場しました。新ジャンルは3つのなかでいちばん税が安く、最も手ごろな選択肢として、爆発的に広がっていったのです。
その税額のしくみが、いま大きく変わっている最中です。ビール系飲料の酒税は、2020年10月・2023年10月・2026年10月の3段階で、少しずつ差を縮めて一本化されることが決まっています。350ミリリットルあたりで数字を追うと、ビールは77円から70円、63.35円へと下がってきました。新ジャンルは反対に、28円から37.8円、46.99円へと、改正のたびに上がり続けています。3つの区分のなかで、すべての段階で増税されているのは新ジャンルだけです。
とくに大きかったのが2023年10月です。この改正で新ジャンルの税額が、麦芽比率25パーセント未満の発泡酒と同じ46.99円まで引き上げられ、両者の差がゼロになりました。税率のうえでは、この時点で「新ジャンルという安い区分」が実質的に消えたと言えます。前の章でふれた「品目を発泡酒に統合」という変更は、この税額の統合とセットの出来事でした。
そして最後の一歩が、2026年(令和8年)10月1日です。この日から、ビール・発泡酒・新ジャンルの酒税はすべて350ミリリットルあたり54.25円(1キロリットル当たり155,000円)にそろい、税による価格差がなくなります。財務省は、似たようなお酒どうしで税率の差が大きいと商品開発や販売数量に影響するため、その状況を改めて税負担の公平性を回復する狙いだ、と説明しています。現行(2023年10月からの税率)と比べると、ビールは350ミリリットルあたり約9.1円の減税、発泡酒と新ジャンルは約7.26円の増税になります。
つまり2026年は、新ジャンルの「安さ」という長年の武器が役目を終える節目です。ビールは下がり、新ジャンルは上がるので、値段の差が上と下から縮まっていきます。ある個人サイトの試算では、第3のビールが約140円から約166円へ、ビールが約197円という例が示されていますが、これはあくまで目安です。実際の店頭価格は、各社の企業努力や原材料費、お店の値付けでも変わります。
03 ・ TASTE
味わいの工夫と選び方
ビールらしいコクや苦味のもとになるのが麦芽です。新ジャンルは、その麦芽を使わなかったり、少なくしたりして造ります。では、麦芽の代わりに何を入れているのか。ここが新ジャンルのいちばん面白いところです。麦芽ゼロ型では大豆やえんどう豆のたんぱく、それに糖類が使われます。スピリッツ添加型では、麦芽の少ない発泡酒に大麦や小麦のスピリッツを足して、飲みごたえを補っています。
麦芽を使わずにビールらしい味を出すのは、なかなか難しいことです。そこで各社は工夫を重ねてきました。たとえば大豆に熱を加えると、香ばしさや色がつく反応(メイラード反応)が起きます。のどごし〈生〉は、この大豆たんぱくの反応で深い味わいを出しています。ほかにも、さまざまな栄養素を加えて酵母の働きを助ける手法などが使われます。そしてホップだけは、どの造り方でも共通して使われます。ビールらしい苦味と香りは、このホップが担っているからです。
飲みごたえの強さは、おおまかに麦芽の量、ホップの使い方、アルコール度数で決まります。麦芽が多いほど味の骨格や甘み、泡持ちが強くなり、ボディが厚くなります。度数もボディに直結していて、目安としては4パーセント台が軽快、5パーセント台が標準、6パーセント以上でしっかりした飲みごたえになります。新ジャンルは麦芽が少なめなので、全体としてはビールよりすっきり軽い口当たりのものが多くなります。
2026年の税一本化を前に、味わいの面でも動きが出ています。税の差で選ばれる時代が終わるため、各社は「安さ」ではなく「味わい」で選ばれるよう、中身を磨き直しています。サッポロ「GOLD STAR」は、黒ラベルの「長期熟成うまみ麦芽」とヱビスの「ドイツ・バイエルンアロマホップ」の製法を一部取り入れています。同じサッポロの「麦とホップ」は麦100パーセントの設計、アサヒ「ザ・リッチ」は2023年3月のリニューアルで仕込みにミュンヘン麦芽を採用しました。安さの器のなかで、味の作り込みが進んでいるわけです。
選ぶときのもうひとつの軸が糖質の表示です。「糖質オフ」や「糖質ゼロ」は、栄養表示のルールで数値が決められています。糖質「オフ」は飲料100ミリリットル当たり糖質2.5グラム以下、糖質「ゼロ」は同0.5グラム未満をいいます。ゼロといっても完全な0ではなく、ごく微量まで、という意味です。また「糖質70パーセントオフ」は他社との比較ではなく、そのメーカーの従来品と比べた数字なので、商品どうしを単純に比べることはできません。糖質を減らす中心の技術は、酵母に糖をより多く食べさせることです。糖はアルコールと炭酸ガスに変わるので、酵母が食べ切るほど残る糖質が減る、という仕組みです。
まとめると、新ジャンルを選ぶときは、しっかり飲みたいなら6パーセント台のもの、軽快に飲みたいなら5パーセント前後のもの、体を気づかいたいなら糖質ゼロ系、というふうに、度数と原料と糖質表示を手がかりにすると迷いません。
04 ・ EIGHT BOTTLES
飲み比べたい新ジャンル8本
ここからは、飲み比べたい実在の8本です。すべて日本で広く買える、本物の新ジャンル(第3のビール)を選びました。発泡酒の代表格である淡麗などは、あえて含めていません。ひとつ大切な注意点があります。前の章のとおり、2026年秋の税一本化に合わせて、このなかのいくつかは「ビール」へ格上げ(移行)される予定です。本記事の執筆時点(2026年7月)ではいずれも新ジャンルとして売られていますが、移行予定のものには印をつけました。
- 本麒麟(キリン): アルコール6パーセント。大麦スピリッツを加えた、飲みごたえのあるタイプです(旧「リキュール(発泡性)②」)。2018年の発売で、3か月で1億本を超える大ヒットになりました。※2026年11月4日に、麦100パーセントの生ビールへ製法を変えてビールへ移行する予定です(度数は6パーセントから5パーセントへ)。
- のどごし〈生〉(キリン): アルコール5パーセント。麦芽を使わず、大豆たんぱくなどから造る「麦芽ゼロ型」の代表格です(旧「その他の醸造酒(発泡性)②」)。2005年発売のロングセラーで、名前のとおりのどごしの良い飲み口です。
- 金麦(サントリー): アルコール5パーセント。小麦スピリッツを加えたタイプです(旧「リキュール(発泡性)②」)。2007年発売の主力ブランドです。※2026年10月以降、麦芽比率を上げてビールへ格上げされる予定で、価格は据え置く方針が発表されています。
- クリアアサヒ(アサヒ): アルコール5パーセント。大麦スピリッツを加えたタイプで、「晴れやか仕上げ」によって、すっきりのなかにうまみを持たせています。※ビールへの移行が検討されていると報じられていますが、正式な発表は執筆時点では確認できていません。
- 麦とホップ(サッポロ): アルコール5パーセント。麦芽・大麦・大麦スピリッツによる「麦100パーセント」の設計です(旧「リキュール(発泡性)②」)。2008年発売で、麦のうまみを前に出したタイプです。※2026年10月20日(缶)にビールへ移行する予定です。
- サッポロ GOLD STAR(ゴールドスター): アルコール5パーセント。黒ラベルの「長期熟成うまみ麦芽」とヱビスの「ドイツ・バイエルンアロマホップ」の製法を一部取り入れた一本です。2020年2月の発売で、1か月で100万ケースを超えるヒットになりました。※2026年10月20日にビールへ移行する予定です。
- ザ・リッチ(アサヒ): アルコール6パーセント。大麦スピリッツを加えた、プレミアム志向のタイプです。2023年3月のリニューアルで、仕込みにミュンヘン麦芽を採用しました。しっかり飲みたいときの一本です。
- クリアアサヒ 贅沢ゼロ(アサヒ): アルコール6パーセント。糖質0(100ミリリットル当たり0.5グラム未満)、プリン体0(同0.5ミリグラム未満)をうたう「ゼロ系」の代表格です。体を気づかいながら、しっかり飲みたい方に向いています。
飲み比べるなら、まずは麦芽ゼロ型ののどごし〈生〉と、スピリッツ添加型の本麒麟を並べてみてください。造り方の違いが、飲みごたえの差として分かりやすく出ます。そこにゼロ系の贅沢ゼロを加えると、健康を気づかうタイプの後味も比べられます。同じ新ジャンルでも、これだけ表情が違うのかと驚くはずです。
おわりに
新ジャンルは、酒税という制約のなかから生まれ、麦芽の代わりに何を使うかという工夫を重ねてきたお酒です。安さで支持され、いままた2026年の税一本化で、その立ち位置が大きく変わろうとしています。安いから選ぶ時代から、味わいや飲みやすさ、体への気づかいで選ぶ時代へ。区分としての新ジャンルは、これから多くがビールへと姿を変えていきます。だからこそ、いまの新ジャンルを飲み比べておくのは、けっこう面白いタイミングです。
気になった一本は、まずは6度から8度くらいによく冷やして楽しんでください。缶の裏の品目表示を見て、「発泡酒②」なのか「リキュール(発泡性)②」なのかを確かめてみるのも、この時期ならではの楽しみ方です。そして飲んで感じたことは、ぜひ酒記に記録しておきましょう。あとで見返すと、自分がどんな飲み口を好むのかが見えてきて、次の一本選びがもっと楽しくなります。
よくある質問(FAQ)
「新ジャンル」と「第3のビール」は何が違うのですか
中身は同じで、呼び名が違うだけです。メーカー各社は「新ジャンル」と呼び、「第3のビール」はマスメディアや広告代理店が広めた通称とされています。どちらも酒税法に出てくる正式な区分名ではありません。
発泡酒と新ジャンルは違うものですか
かつては別の区分でした。ただし2023年10月1日の改正で、新ジャンルは酒税法上の品目が「発泡酒」に統合され、税額も麦芽比率25パーセント未満の発泡酒と同じになりました。いまは法律のうえでの独立した区分は、事実上なくなっています。
缶に「発泡酒」と書いてあるのに第3のビールなのですか
はい。2023年10月の改正で、新ジャンルの品目が「発泡酒」になったためです。末尾の「②」という記号が、第3のビール相当の低い税率区分を示します。経過措置により、製造時期によっては旧表示(リキュール(発泡性)②など)の缶も混ざっています。2026年10月以降は、記号も外れて単に「発泡酒」と表示される見込みです。
2026年10月には何が変わるのですか
ビール・発泡酒・新ジャンルの酒税が、350ミリリットルあたり54.25円に一本化されます。ビールは下がり、新ジャンルは上がる方向です。税の差がなくなるため、本麒麟や金麦、麦とホップ、GOLD STARなど、主力の新ジャンルの多くが「ビール」へ格上げされる予定です。
糖質ゼロの新ジャンルは体にやさしいのですか
糖質オフやゼロをうたう商品は多いですが、あくまでお酒です。「オフ」は100ミリリットル当たり糖質2.5グラム以下、「ゼロ」は0.5グラム未満という表示の基準で、ゼロでも完全な0ではありません。アルコールもカロリーもあるので、飲みすぎは禁物です。純アルコール量を意識して、適量を楽しんでください。
主な参考・出典
- 国税庁「発泡性酒類の段階的な税率変更に係る品目及び税率適用区分の表示方法の手引き(令和5年8月)」「酒税法における酒類の分類及び定義」「酒税率一覧表」
- 財務省「酒税に関する資料」(酒税一本化のスケジュールと税額・ねらい)
- キリン「新ジャンル商品の品目及び税率適用区分の表示変更について」ほか各社公式情報(キリン・サントリー・アサヒビール・サッポロビール)
- 辻・本郷税理士法人「2026年にビール系飲料の酒税が統一」、タケバ会計事務所ほか税務解説
- ウィキペディア日本語版「第三のビール」「発泡酒」、REPUBREW、たのしいお酒.jp、ビール女子、日本ビアジャーナリスト協会、東京新聞、日本経済新聞、日経クロストレンド等の各記事
本記事は、確認できた事実をもとにまとめた一般的な解説情報です。酒税の税額は2026年10月1日に54.25円へ一本化される予定で、時点により異なります。本麒麟・金麦・麦とホップ・GOLD STARなどのビールへの移行時期や、クリアアサヒの移行検討などは各社の発表にもとづく予定であり、実際の内容や価格、缶の表示、ラインナップは時期により変わることがあります。お酒は20歳になってから、適量を楽しみましょう。飲酒運転は絶対にやめましょう。