GIN ・ カクテル

ジンのカクテル、定番をおうちで

ジントニックの次へ。マティーニ、ネグローニ、ギムレット。名作の黄金比と作り方です。

GIN / 約12分で読めます / 2026

ジントニックはよく頼むものの、その次の一杯となると急に選びにくくなります。ジンのカクテルは名前が多く、どれが定番でどれが冒険なのか、最初は線引きが分かりにくいものです。バーのメニューを前に、つい同じ一杯ばかり頼んでしまう人も多いはずです。

ジンはウォッカ・ラム・テキーラと並ぶ世界4大スピリッツの一つで、マティーニやジントニックをはじめ数えきれない定番カクテルの土台になっています。裏を返すと、ジンを一本持っておくだけで、家で作れる名作がぐっと増えます。

ここでは、マティーニ・ネグローニ・ギムレットの黄金比と作り方、そして家で味を決めるコツを紹介します。よく「ジンはカクテルベースの王様」と言われますが、これは正式な称号ではなく、キャッチコピーのようなものです。そう呼ばれる理由(ドライな酒質とボタニカルの骨格)にも触れていきます。


01 ・ WHY GIN

ジンがカクテルの土台に選ばれる理由

ジンは世界共通で「ジュニパーベリー(西洋ネズの実)で香りづけした蒸留酒」と説明されます。松やヒノキを思わせる清涼感が骨格になり、ここにコリアンダー(スパイシー)、アンジェリカ根(土っぽい)、柑橘の皮、カルダモン、花などのボタニカル(草根木皮=ハーブや果皮、根、花)を組み合わせます。この配合でジンの個性の約9割が決まると言われ、複数の香りが層になった構造こそ、割っても香りが残る理由です。

日本の酒税法では「スピリッツ」

この「ジュニパー必須」は、ヨーロッパ連合や各国の生産基準であって、日本の酒税法の条文ではありません。日本ではジンはウォッカ・ラムと同じ「スピリッツ(エキス分2度未満)」に分類されるだけで、ボタニカルやベーススピリッツの決まりはありません。ラベルの品目表記も「スピリッツ」になります。とはいえ国産のジンでも、世界の慣行にならってジュニパーを使うのが共通認識です。

「王様」と呼ばれる根拠

ジンがベースとして重宝されるのは、ドライ(低甘味)でジュニパーの骨格がはっきりしているためです。甘さが控えめで香りが強いので、ネグローニのように苦味や甘味の強い材料と合わせても、ジュニパー感が消えません。無味を目指すウォッカにはない植物由来の複雑さがあり、その深みが幅広いカクテルに対応できる汎用性につながっています。

なお、日本語で「カクテルの王様」と言うと、伝統的にはジンそのものではなく、ジンベースの「マティーニ」を指します。ジンを王様にたとえるのは、あくまで最も汎用性の高いベースを指す比喩として受け取ってください。

ステアとシェイク、3つのタイプ

ジンの定番カクテルは、作り方でおおよそ3つに分けられます。ひとつめはマティーニやネグローニのような「スピリッツ主体(ステア系)」、ふたつめはギムレットやジンフィズのような「柑橘入りのサワー系(シェイク系)」、みっつめはジントニックやトム・コリンズのような「ソーダやトニックで割るハイボール系(ビルド)」です。同じジンを使い、技法を変えるだけで表情が変わります。

ステア(混ぜる)は、材料がほぼお酒だけのカクテルに使います。氷とやさしく混ぜて空気を含ませず、各材料の輪郭を残したまま冷やし、加水は最小限にとどめます。仕上がりはシルクのように滑らかで澄んでいます。マティーニ・マンハッタン・ネグローニが代表です。

シェイク(振る)は、柑橘の果汁や卵白、乳やクリームなど「混ざりにくい」「濁る」材料が入るときに使います。振ることで無数の細かい気泡が入り、軽くふわっとした口当たりになります。氷との接触が激しいぶん、ステアより速く冷え、加水も多めに進みます。ギムレット・ジンフィズ・ダイキリなどが該当します。気泡はすぐ消えるため、振ったら早めに飲むのが前提です。もっとも、その冷えや加水の度合いは、氷の状態(乾いた氷か、濡れた氷か、砕いた氷か)で大きく変わります。

迷ったときの目安は「仕上がりが澄むならステア、濁る(泡立つ)ならシェイク」「柑橘や卵・乳が入ればシェイク、お酒だけならステア」です。ただしこれはあくまで基本の目安で、例外もありますし、プロには好みで振ったり混ぜたりする流儀の差もあります。「絶対」ではなく、判断の出発点として覚えておくと役立ちます。

最低限そろえたい道具


02 ・ MARTINI & GIMLET

マティーニとギムレット、名作の黄金比

ジンの二大古典といえば、マティーニとギムレットです。どちらもジンの骨格をまっすぐ味わえる、シンプルなのに奥行きのある一杯です。

マティーニ = ジン+ドライベルモット

マティーニは基本、ジンとドライベルモットを氷でステアし、よく冷やしたグラスに注ぎます。バーテンダーが原則シェイクしないのは、すべてお酒だけで構成される一杯だからです。激しく振ると希釈が過剰になり、細かい気泡でシルキーな口当たりが損なわれると考えられています。

比率は時代とともに辛口(ドライ)へと進んできました。1888年のハリー・ジョンソン著『バーテンダーズ・マニュアル』では、オールド・トム・ジンとベルモットをほぼ半々で合わせ、当初は甘口のベルモットを使っていました。その後ドライベルモットとロンドン・ドライ・ジンが普及し、1922年頃にはジン2:ドライベルモット1が最も広く知られる形になりました。目安として、20世紀の後半にはジン5:1や6:1も一般的になり、さらにベルモットをほんの少し(ダッシュ)だけ加える「ドライ・マティーニ」、ほぼ入れない「エクストラ・ドライ」という言い方も生まれました。年代ごとの比率はおおまかな傾向で、店や時代で幅があります。

飾りと、いくつかのバリエーション

ガーニッシュ(飾り)は、グリーンオリーブかレモンピール(レモンの皮のねじり)が定番です。オリーブなら塩気とうま味、レモンピールなら柑橘の華やかな香りが加わり、どちらを選ぶかは好みで決めて構いません。呼び名の違いも整理しておきます。

ボンド映画の「ヴェスパー」

マティーニの派生で有名なのが、ヴェスパー・マティーニです。イアン・フレミングが小説『カジノ・ロワイヤル』(1953年)で創作し、主人公ジェームズ・ボンドが劇中でレシピを考案して、ヒロインのヴェスパー・リンドにちなんで名づけました。ジン・ウォッカ・キナ・リレを使う点で、伝統的なジン+ベルモットのマティーニとは別ものです。

ヴェスパーは、マティーニと違って例外的にシェイクで作ります。フレミングの原文でも「シェイク」と指定されています。原文は「ゴードンのジン3、ウォッカ1、キナ・リレを2分の1。氷のように冷たくなるまでよくシェイクし、大きく薄いレモンピールを添える」という趣旨です。なお原典のキナ・リレは現在製造されておらず、今はリレ・ブランやコッキ・アメリカーノで代用されます。

「ステアせずシェイクで」というせりふはボンドの代名詞ですが、由来は通説とずれています。小説では4作目『ダイヤモンドは永遠に』(1956年)で初めて登場し、しかもボンド本人のせりふではありませんでした。映画では『ドクター・ノオ』(1962年)で悪役のノオ博士が口にし、ボンド自身が完全な形で言うのは『ゴールドフィンガー』(1964年)からです。細部には諸説があります。

ギムレット = ジン+ライム

ギムレットは、ジンとライムを合わせたシンプルな2素材のカクテルです。伝統的にはローズ社のライムコーディアル(加糖の保存用ライムジュース)を使います。1930年の『サヴォイ・カクテル・ブック』ではジン1:ライム1でしたが、現代は甘さを抑えてジン4:コーディアル1くらいまで振れます。ライムコーディアルの代わりに、生のライム果汁と砂糖(シュガーシロップ)で作るスタイルもあります。冷やしてストレート(氷なし)でカクテルグラスに注ぎ、ライムを飾るのが定番です。ライム果汁を含むぶん、シェイクで作るバーも多くあります。

名前の由来には二つの説があります。ひとつは、英語で穴をあける小型の工具を指す「ギムレット」にちなむという説、もうひとつは英国海軍の軍医サー・トーマス・ギムレット(1857〜1943)が考案したという説です。ただし後者は本人の死亡記事や経歴資料に記述が見当たらず、確証は乏しいと言われています。背景には英国海軍の壊血病対策があり、1867年の商船法で商船にライムジュースの常備が義務づけられ、同じ年にエディンバラのローチラン・ローズがアルコールを使わないライムジュースの保存法を特許化しました。これがローズ社のライムコーディアルの始まりです。

ギムレットは、レイモンド・チャンドラーの小説『長いお別れ』(1953年)に登場することでも知られます。作中では、本当のギムレットはジンとローズ社のライムジュースを半々にするものだと語られ、マティーニよりも上だと評されます。1:1の配合で描かれ、主人公フィリップ・マーロウの象徴的な一杯として、今も親しまれています。


03 ・ NEGRONI & MORE

ネグローニと、家で作れる名作たち

ネグローニ = 等量1:1:1のビルド

家飲みで覚えておいて損がないのがネグローニです。ジン・カンパリ・スイート(赤)ベルモットを等量(1:1:1)で合わせるだけで完成します。国際バーテンダー協会の公式レシピは、ジン30ミリリットル、スイートベルモット30ミリリットル、カンパリ30ミリリットルを基準にします。氷を入れたロックスグラスに直接注いでステアし、オレンジのスライスかピールを飾ります。シェイカーもいらず、計量さえ守れば失敗しにくい代表格です。

発祥はイタリア・フィレンツェとされ、1919年から1920年頃、カミッロ・ネグローニ伯爵のために生まれたと言われます。いつも飲む「アメリカーノ」を強くしたい伯爵が、ソーダの代わりにジンを入れてほしいと頼んだのが始まり、という説が最も有名です。アメリカーノ(ベルモット+カンパリ+ソーダ)のソーダをジンに替えた進化形、と考えると分かりやすいです。ただし起源には別の説もあり、確定はしていません。

計量だけで作れる名作

ジンがあれば、ほかにも家で試せる古典がたくさんあります。

Gin Cocktails
定番カクテルの黄金比
カクテル材料と比率
マティーニStirジン+ドライベルモット。近年はジン5〜6に対しベルモット1。氷でステアし、冷やしたグラスへ。
ギムレットShakeジン+ライム。ジン4:ライムコーディアル1から、古典の1:1まで。ライム果汁ならシェイク。
ネグローニBuildジン:カンパリ:スイートベルモット=1:1:1(各30ml)。氷のグラスでステアし、オレンジを添えて。
トム・コリンズBuildジン+レモン果汁+砂糖+ソーダ。背の高いグラスに氷を入れ、ソーダで満たして軽く混ぜる。
ホワイト・レディShakeジン40:コアントロー30:レモン果汁20(ml)をシェイク。卵白を加える流儀も。
比率は代表的な目安です。店や作り手で流儀の差があります。

04 ・ AT HOME

家で味を決める、5つのコツ

1. きちんと計量する

一番の近道は、目分量をやめてジガーで計ることです。甘味・酸味・アルコールの強さ・苦味の比率が正確になり、毎回同じ味を再現できます。目分量だと配合が狂って味が崩れるうえ、アルコール量も不正確になりがちです。最初のうちは、レシピどおりに計るのが失敗しないコツです。

2. 氷は大きく、透明に

氷は「大きい」「清潔で透明」なものほど溶けにくく、水っぽくなりにくくなります。大きい氷や球体の氷は、体積のわりに表面積が小さいぶん溶けるのが遅く、逆にクラッシュアイスは速く溶けます。これとは別の要因として、透明な氷は密度が高く不純物や気泡が少ないため、白く濁った氷より溶けにくくなります。ネグローニやオールドファッションドには、大きな一個氷が向いています。

3. グラスを冷やしておく

組み立てる前に、カクテルグラスを冷凍庫で15〜20分ほど、霜がつくまで冷やしておきます。冷えたグラスに注ぐと、飲んでいる間に温まりにくく、余計な希釈も抑えられます。マティーニなど澄んだ一杯ほど、効果を感じられます。

4. ステアは手早く

ミキシンググラスに氷を入れたら、ステアは20〜30秒を目安に手早く済ませます。それ以上混ぜても、これ以上は冷たくならず、希釈だけが進んで水っぽくなります。最適な時間は氷のサイズや量、室温でも変わるので、「手早く、混ぜすぎない」を原則にすると分かりやすいです。

5. ベルモットは冷蔵で早めに

ベルモットの保存も、仕上がりの味を左右します。ベルモットはワインにブランデーなどで度数を高め、ハーブや香草で香りづけした酒精強化ワインで、度数は概ね16〜18パーセントです。開栓後は少しずつ酸化して香りが弱まり、味が酸っぱくなっていきます。開けたら必ず冷蔵庫に入れ、開栓後およそ1か月(長くても数か月)を目安に、早めに使い切りましょう。栓を固く閉め、瓶を立てて保管すると長持ちします。

どのジンを選ぶ?

最後にジン選びです。多くのカクテルの土台に合う万能タイプが、ジュニパーが主役の「ロンドン・ドライ・ジン」です。松やヒノキを思わせるキリッとした辛口で、ジントニックからネグローニまで幅広く基準になります。ロンドン・ドライは、蒸留後に香料や着色料を加えず、加糖も1リットルあたり0.1グラム以下に抑えたスタイルで、度数はヨーロッパ連合で37.5度以上、アメリカで40度以上が下限とされています。

一方、ジュニパーを控えめにして柑橘や花、ハーブを前に出した「コンテンポラリー(ニューウェスタン)」や、柚子・山椒・緑茶・桜など日本の素材を使う「和ジン(ジャパニーズジン)」は、定番カクテルに使うと香りの表情がガラリと変わります。なお「和ジン」「クラフトジン」「ロンドン・ドライ」はいずれも法律で決まった区分ではなく、製法や売り方の呼称です。日本の酒税法では、どれも「スピリッツ」に含まれます。


05 ・ EIGHT BOTTLES

カクテルに向く8本

ここからは、カクテルの土台に使いやすく、日本でも一般に手に入る8本を紹介します。規格の王道「ロンドン・ドライ」を中心に、柔らかな古典派や、香りに個性を持たせた和のジンまでそろえました。度数は日本で流通している瓶の値です。

規格の王道 = ロンドン・ドライ

古典カクテル向けの、柔らか系

和の個性派


おわりに

ジントニックの次の一杯は、思っているよりずっと近くにあります。ジンを一本用意して、まずは計量だけで作れるネグローニから始めてみてください。慣れてきたら、ステアでマティーニ、シェイクでギムレットと、技法を一つずつ足していけば、作れる名作が着実に増えていきます。

飲んだジンやカクテルを記録しておくと、次に何を選ぶか迷いにくくなります。酒記では、飲んだ一杯の感想をつけて、自分の好みの傾向を振り返れます。「このジンはネグローニに合った」「マティーニはビーフィーターが好み」といったメモが、次の一杯を選ぶときの手がかりになります。


よくある質問

ジンとウォッカは何が違うのですか?
ジンはジュニパーをはじめとするボタニカルで香りづけした蒸留酒で、植物由来の複雑さと深みがあります。無味を目指すウォッカと違い、割っても香りが残るのが特徴です。日本の酒税法では、どちらも同じ「スピリッツ」に分類されます。
シェイクとステアは、どう使い分ければいいですか?
目安は「お酒だけのカクテルはステア(澄む)、柑橘や卵・乳が入るならシェイク(濁る)」です。マティーニやネグローニはステア、ギムレットやジンフィズはシェイクが基本になります。ただし例外もあり、あくまで判断の出発点として考えてください。
家で最初にそろえる道具は何ですか?
ジガー(計量器)、ミキシンググラスとバースプーン(ステア用)、シェイカー(シェイク用)の3点があれば、定番はひととおり作れます。迷ったら、味の再現性を決めるジガーから用意するのがおすすめです。
マティーニはなぜシェイクしないのですか?
材料がお酒だけなので、激しく振ると希釈が過剰になり、細かい気泡でシルキーな口当たりが損なわれると考えられているためです。だからステアで静かに冷やします。なお映画で有名なヴェスパーは、例外的にシェイクで作ります。
ベルモットは開けたらどのくらい持ちますか?
ベルモットは酒精強化ワインで、開栓後は少しずつ酸化します。開けたら冷蔵庫に入れ、およそ1か月(長くても数か月)を目安に早めに使い切りましょう。栓を固く閉め、瓶を立てて保管すると長持ちします。

主な参考・出典

  • 国税庁「酒税法における酒類の分類及び定義」/日本洋酒酒造組合「スピリッツ(ジン・ウオッカ・ラム)」
  • アルコログ「ジンの定義とは」/たのしいお酒/リカーページ「タイプ別ジンの定義まとめ」
  • ヨーロッパ連合の蒸留酒規則(2019年・ロンドン・ドライ・ジンの製法規格)
  • ウィキペディア各項目(マティーニ/ギムレット/ヴェスパー/ネグローニ/トム・コリンズ/ホワイト・レディ/アビエーション/ジン/ベルモット)
  • 国際バーテンダー協会(IBA)公式レシピ
  • ディフォーズ・ガイド「シェイクのコツと俗説」/マスタークラス「シェイクとステアの使い分け」
  • ヴァインペア/パンチ/カンパリ・アカデミー「ネグローニの物語」
  • カクヤス「おいしいジンの飲み方」/アサヒビール「カクテルガイド」
  • 各メーカー公式(ビーフィーター/タンカレー/ボンベイ・サファイア/プリマス/季の美・京都蒸溜所/サントリー〈ロク〉/ニッカ〈カフェジン〉)および正規輸入元の商品情報

本記事のレシピや比率は代表的な目安で、店や作り手によって流儀の差があります。カクテル名の由来や歴史には諸説あるものも含みます。度数や仕様は変わることがあるため、購入時は各メーカーの表示をご確認ください。お酒は20歳になってから、適量を楽しみましょう。妊娠中や運転前の飲酒はできません。

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